【読食】お寿司屋さんってこんな風に考えてお仕事してるんだ、ってことが分かる「寿司屋のかみさん 二代目入店」

寿司!

中野のお寿司屋さん「名登利寿司」のおかみさんのエッセイシリーズはたくさん出ているようなのですが、これまで電子書籍で読めるのは初期の作品「寿司屋のかみさん うまいもの暦」だけでした。

しかし最近Kindleで2014年5月に発売された最新作が読めることが分かり早速読んでみることにしました。

 

お寿司屋さんの日常

前作でも感じた事ですが、おかみさんの日記を基にしているとのことで、朝の準備から朝ご飯の様子、営業中のお客さんのこと、そして仕事の後の晩酌のことなどが描かれていて、お寿司屋さんの一日というものがよく分かりました。

息子さんが入ってからはこんな感じのようです。

今日から豊が入店したので朝のうちにミーティングをした。朝食は十一時半、昼食は四時半。仕込みの多いときは朝食がずっるが、昼は決まった時間におりてくるようにと話した。

お寿司屋さんというと朝早くから築地とかに仕入れに行くからその前に朝ご飯とかたべるのかと思っていましたが、仕入れをしてからなんだと思ったり。おかみさんは朝ご飯の後仕込みをしてから夕方までの時間に執筆などをしているそうです。

それから食事の様子も念入りに書かれているのも好きなポイントです。

お寿司屋さんだからと行っていつもお寿司屋魚介類を食べているという訳ではないのですが、やはりおいしい魚介類を食べる機会は普通の家庭に比べたらかなり高そうに思います。

例えば、ある日の朝ご飯はこのように描写されます。

朝ご飯は炊き込みご飯にした。サザエ、ホッキ、ミル貝、ホタテ貝の残ったのを細かく切り、多めのだし汁に醤油と砂糖、酒で煮て、冷凍しておいたものだ。これを解凍して米四合と合わせて炊くと、会の炊き込みご飯になる。十分くらい蒸らしてから釜の蓋を開けると、会の甘い香りに醤油の入り混じった湯気がふわりと立ち上がる。そこに、胡麻とショウガの千切りを混ぜれば出来上がりだ。(中略)炊き込みご飯にサザエを入れたのは初めてだったので、どうかなと思ったが、硬くならず味がよく出ていた。

これはいかにも美味しそう!

 

あと、お寿司屋さんで気になるのがお値段だと思うのですが、実際にお客さんもそのあたりを心配している人が多いんだということも分かりました。

ちなみに名登利寿司ではこのような値段なのだそうです。

「セットのものは、おまかせ握りが一人前五000円です。季節のネタ十貫に巻きものと玉子焼きが入っています。お好みですと、つまみと握りにお飲み物が入って、平均一万五000円くらいですね。」

これはお客さんへの説明なのですが、これを聞いてキャンセルしてしまう人もいれば、もっと高いと思っていたのでほっとするお客さんもいるそうです。

おかみさんいわく、

おまかせ握りに追加をいくつか食べて一人九000円ほどだった。お酒を飲まず、つまみも食べなければそのくらいでまかなえる。寿司屋に来たらつまみを食べないと、かっこ悪いと思っている人も多いようだが、寿司をメインにしてくれればいいのだ。

とのこと。

お寿司屋さんというと、おまかせとかおこのみとか仕組みがよく分からないのですが、こういう風に書いてあると行きやすいのではないでしょうか。

二代目入店

おとおさんと二人でやっていた名登利寿司に息子さんである二代目が入ることになったというのが大きなできごとだったようです。息子の豊さんはサラリーマンをしていたのが結婚を機に寿司屋になることを決意、おとおさんと同じお店で修行を8年していたそうです。

その二代目がいろいろと経緯があって名登利寿司でおとおさんとおかみさんと一緒に寿司を握ることになったのですが、この一連の経緯がおかみさんの視点で描かれているのが興味深いところでした。

職人さんであるおとおさんの考えはまた別にあるのだと思いますが、おかみさんは二人のやりとりをときに心配そうに、時にやさしく見守っている様子が分かります。お二人でやっていたお店なので、賄いも若い人向けにどうしようか考えたり、仕込みのやり方もいままで手伝ってきたおかみさんと違っていたり。ネタなども二代目の提案で新しいものが入ったり。

ドラマや漫画だとあれこれと大袈裟な展開になりがちですが、名登利寿司では二代目も修行を終えていることもあってか、穏やかな雰囲気で描かれていました。

 

Tomo’s Comment 

おかみさんがかかれたシリーズを読んで来店するお客さんもたくさんいらっしゃる様子が書かれていました。

また別に感想を書こうと思っていますが「「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。」という本を最近読んだのですが、こちらではお客さんが分からないだろうと思って、外食産業では経費を削るためにさまざまなごまかしが行われていることが描かれています。原料や標記のごまかしなど、経費節減がお客さんよりも重視されている例も多いようです。

食べる方も口に入るものだし、(たとえ美味しく感じたとしても)へんなものは食べたくない気持はありますが、外食の場合どんな材料を使ってどのように調理・保存されているかはオープンキッチンのお店でもない限り確認しようもありません。

その点、名登利寿司のおかみさんの本を読むと、仕入れにも味にも仕込みにも良く気を遣っていることが痛いほど分かるのです。こうしたお店であれば、安心していけると思いますし、むしろ様々な美味しそうなお寿司の描写もありますので行ってみたいと思います。

そしてこうしたことも、職人さんが自ら書くよりも、そばで見ているおかみさんが書いているということのほうがよく分かるのかもしれません。

他のシリーズは電子書籍化されていないようなので、日本に帰ったらじっくりと読んでみようと思います。

 

 

キンドル版はこちらです。

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