【ホームズ】ホームズが切り裂きジャックに挑む!「ホワイトチャペルの恐怖」

The Whitechapel Horrors

シャーロック・ホームズには正典と呼ばれる60編の作品があります。長編が4,短編が56。

研究するのには手頃な数の作品数ということで、シャーロッキアン達は日夜あれやこれや研究を深めているのです。

一方でもっとホームズ物を読みたい、という要望も多いためか、パスティーシュと呼ばれる作品も続々と出版されています。

 

切り裂きジャックもの

ホームズと同じ時代に話題となった犯罪である「切り裂きジャック」。しかしホームズの正典の中では一切触れられていません。

切り裂きジャックはいまだに犯人が誰かわからないままとなっていて、ジャックの正体を探る研究は今でも続いています。

事件の概要はWikiでは次のようにまとめられています。

1888年8月31日から11月9日の約2ヶ月間にロンドンのイースト・エンド、ホワイトチャペルで少なくとも売春婦5人をバラバラにしたが、犯人の逮捕には至らなかった。署名入りの犯行予告を新聞社に送りつけるなど、劇場型犯罪の元祖とされる。当時の定義づけによる精神病患者から王室関係者まで、その正体については現在まで繰り返し論議がなされているが、1世紀以上経った現在も犯人は不明。切り裂きジャックは売春婦を殺人の対象に選んだ。犯行は常に公共の場もしくはそれに近い場所で行われ、被害者はメスのような鋭利な刃物で喉を掻き切られ、その後、特定の臓器を摘出されるなどした。そのような事実から解剖学的知識があるとされ、ジャックの職業は医師だという説が有力視されている。ただ、このような事件が起きていた間に、被害者の女性たちが警戒心もなく犯人を迎え入れていた形跡があることから、実は女性による犯行とする説もあった。また、犯行は1年以上続いたという説もある。「ジャック」とはこの場合特定の人物の名前を示すわけではなく、日本でいう「名無しの権兵衛」のように英語圏で呼び方の定まっていない男性を指す名前である。

 

近年では推理作家のパトリシア・コーンウェルのこんな研究もまとめられています。

 

また最近はこんなニュースもありました。

残念ながら鑑定方法に問題があったようでもあります。

シャーロッキアンのようにジャックの研究も盛んで、リッパロロジストと呼ばれているそうです。

 

私も研究とまではいきませんが、ホームズ時代のロンドンの事件と言うことで興味を持っていました。

ロンドンに行ったときにもこんなツアーに参加したり。

Jack the Ripper Walk by London Walks

犯行現場を巡るウォーキングツアーなのですが、出発が夜の7時半からということで雰囲気がすごいです。最後はジャック・ザ・リパーパブで壁に飾られた当時の新聞記事を読んだりして解散となりました。

 

ホームズとジャック

事件から120年が経過した現在でも注目を集める「切り裂きジャック」。まさにホームズが活躍した時代でもあり、ホームズが取り組まなかったのは不自然とも言えます。

事件が発生したのは1888年。(上述のベアリング・グールドによると)ちょうど「バスカヴィル家の犬」事件にホームズが取り組んでいた頃です。

 

そんなことからホームズ対切り裂きジャックをテーマにした作品が多く存在しています。

 

こちらはエラリー・クイーンとの時間を超えた推理合戦が読みどころとなっている作品。

ホームズとクイーンとジャックと三者そろい踏みということで、読み応えありです。

 

 

こちらはジャックとの対決だけの作品ではないのですが、一部にジャックが登場しとても印象に残っています。

著名なホームズ研究家でもあるグールド氏のホームズの伝記です。

 

こちらは映像作品ですがジャックとの対決がテーマのよう。

映像作品は実はまだ私の研究対象になってないので未見。いずれ見てみたいとは思っています。

 

こちらはミュージカル。公演については5月10日までということでもうすぐ終了です。

 

「ホワイトチャペルの恐怖」は

本作、「ホワイトチャペルの恐怖」もそんなホームズ対ジャックを描いた作品となります。

Amazonの内容紹介ではこのように紹介されています。

ロンドンの高級ホテルの金庫で発見された、分厚い原稿の束。それに付けられていたメモには「ジョン・H・ワトスン博士」の名と、「私の死後50年が経つまでこれを公表してはならない」という但し書きがあった。その原稿こそは、シャーロック・ホームズの親友ワトスン博士が、唯一公表をためらった驚くべき事件の記録だったのだ―19世紀末のロンドンを舞台に、今もなおその正体が謎に包まれている伝説の猟奇殺人者「切り裂きジャック」を、名探偵ホームズとワトスンが追う。

 

ホームズのパスティーシュの一つの定番が、ワトソン博士による未発見原稿が発見されるという形式を取るという物。こちらもそのようなパターンを踏襲しているのですが、大きく異なっているのはその文体。

多くのパスティーシュはワトソン博士の一人称という正典と同じパターンを取ることがおおいのですが、本作は三人称で描かれています。これはパスティーシュを読み慣れた人にすれば違和感があります。

翻訳者の日暮雅通さん(日本のホームズクラブの会員でホームズ物の翻訳を多数されている方です)も同じように感じたそうで、あとがきの中で、著者本人に意図を確かめた話を掲載されています。著者の言によると、次のような理由があるのだそう。

三人称にした第一の理由は、ワトスンの語りにするとドイルのコピーとなり、単なるパロディという印象を持たれてしまうから。固定したイメージでなく、一つの小説として読まれたかったということらしい。そして第二は、三人称にすれば、ホームズが何を考えいるかを描くことができるから。ワトスンの目を通しては無理なことが盛り込めるわけで、こうしたことは本書の第九章あたりを読むと、よくわかるのではなかろうか。(下巻P306)

確かに、ホームズがジャックを追跡するシーンなどはワトソン博士の目からでは描けなかったことであり、このシーンがかなり迫力あるものであるので作者の意図は成功しているといえると思います。

 

切り裂きジャック事件についても良く調べられていて、実在の人物も多く登場します。フィクション部分(ホームズの捜査)とノンフィクション部分(実際のジャック事件)が見事に融合していて、一つの作品としてうまく成り立っていると思います。

そして何よりも当時のロンドンの貧困地域の描写など、当時の雰囲気をよく描けていると思います。繁栄の影の部分が描かれていますので、全体のトーンは暗くなっています。救われるのはやはりホームズとワトソン博士の友情でしょうか。

ホームズ作品を読みたいのは、二人の友情を読みたいからなのだというのが実感できました。

 

Tomo’s Comment 

本作はシャーロック・ホームズのパスティーシュというよりは、二次創作的な側面が強いので、シャーロッキアンによっては評価がまちまちになるかと思います。

私は読み応えのあるノンフィクション的フィクションとして楽しむことができました。

 

読んでいた残念だったのは、実在の登場人物が多いのですが、その人達がどんな人たちなのかわからないまま読んでいたことです。ホームジアンとしての興味の幅をもう少し広げて、当時の英国の状況についてもう少し勉強が必要だと感じました。

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