【ホームズ】ホームズの活躍を概観したいならこの一冊。「ミステリ・ハンドブック シャーロック・ホームズ」

ミステリ・ハンドブックシャーロックホームズ

シャーロッキアンとなってシャーロック・ホームズを研究しようと思った際に読むべき書物にはいくつかの種類があります。

今回紹介する「ミステリ・ハンドブック シャーロック・ホームズ」は、そんな中でもガイドブックとなるような一冊となっています。

 

ホームズ研究における参考文献

まず読むべきは、オリジナル作品である聖典または正典と呼ばれる60作品。ワトソン博士が書いた(一部例外あり)この正典がすべての基本となります。

4つの長編、5つの短編集があります。様々な翻訳がなされていますが、中には短編のまとめ方が違ったり、すべての作品が網羅されていないものもあり注意が必要です。

また同じオリジナルの全集でも、登場する様々な言葉などに注釈をつけた注釈付全集というものもあります。註釈をつけ、さらに作品の発表順ではなく、事件の発生時期を推測して、事件発生順に並べたのがベアリングーグールド氏の全集です。註釈付き全集ではオックスフォード版やレスリー・クリンガー氏によるものも有名です。

オリジナルではありませんが、事件発生の時期を追う形でホームズの生涯を描く、伝記ものというジャンルがあります。作品中で触れられていない時期などについては、作者の推理や想像が入りますので、この辺の解釈が面白いところです。

以前紹介した「ホームズとワトソン 友情の記録」や、上でも触れたベアリングーグールド氏が書いた「ガス灯に浮かぶ生涯」などがあります。

ホームズ作品に出てくる言葉、できごとを解説する事典や辞典といったジャンルもあります。

網羅的な辞典とは違い、一つのテーマについての研究も盛んに行われていてこうした研究論文を扱った研究書も数多く出版されていたり、雑誌に寄稿されていたり、ファンクラブの会誌などに発表されたりしています。

あとは、パロディとかパスティシュといった分野で、シャーロック・ホームズ本人が登場するものもあれば、ホームズをモデルとしたオリジナルキャラクターを主人公としたものまで様々です。ホームズ本人が登場するものも、原作に忠実な描写から、奇想天外なものまでありますが、個人的には原作の世界を損なわないものが好きです。特に、オリジナル作品で事件名だけ触れられている事件について書かれたものなどは完成度の高いものが多いように思います。

 

ミステリー・ハンドブックとは

さて、今回紹介する「ミステリー・ハンドブック シャーロック・ホームズ」は研究書の類に入るのだと思います。スタイルとしては、タイトル通り「ハンドブック」としてまとめられており、60の作品を1作品ごとに1ページでまとめるとともに、合間にホームズ作品やその背景を解説するコラムなどが挿入されています。

これまでシャーロキアンの間で議論されてきた代表的なテーマに触れられていたり、当時の社会情勢や生活を解説したりですので、ホームズの世界をよりよく理解したい人や、シャーロキアンの世界に興味がある人には格好の入門書となると思います。

例えば、次のようなテーマのコラムがあります。

  • 帽子無しのホームズを想像できるだろうかー挿し絵の持つインパクトについて
  • ヴィクトリア朝時代の生活
  • 真実の剣、正直の刃ーアーサー・コナン・ドイル小伝
  • ホームズのロンドン
  • 探偵たちープロとアマチュア
  • 生涯で最良の役柄
  • 憂鬱な顔をしている?ホームズの愉しみはなんだったのか
  • それほど初歩でもないよ、ワトスン君
  • ゲームはまだ続くー世界のホームズ愛好団体について
  • 国家的な大問題
  • 英国の犯罪、およびそのナポレオン
  • あの偉大なる人物の陰に・・・ワトスンあり
  • 正典中の犬たち
  • 植民地の冒険
  • 社会の階級ー十九世紀英国における貴族と平民
  • ソヴリンからシリング、ポンドからペンス
  • 女性に囲まれた独身男
  • 家をホームズグッズでいっぱいにしようー名探偵グッズの数々
  • パロディ、パスティーシュ、その他の模倣

これだけきちんと読むと、シャーロック・ホームズの魅力や魅せられた人々、研究分野の広がりなどが良く理解できると思います。

 

実は、大学時代にこの本によく似た本を読んで、シャーロキアンの世界に足を踏み込んだのですが、その後しばらくどこかにいってしまい見つかりませんでした。

それでこちらを購入したのですが、構成などはよく似ているものの取り上げられているトピックは違っていました。

当時読んだ本のタイトルも忘れてしまっていたのですが、本書の後書きで触れられている「名探偵読本シャーロック・ホームズ」がそれだと気づき、古本で購入しました。

似た本ではありますが、二冊揃えておくと研究がはかどると思います。

 

Tomo’s Comment 

名探偵読本はもう新刊で入手するのは難しくなっていますが、こちらのミステリハンドブック、私の持っている版はありませんが2012年に復刊されたものであればまだ入手できるようです。

 

シャーロッキアンの入り口として良い一冊だと思います。

 

本文で登場した他の書籍も紹介しています

【ホームズ】ホームズ研究に目覚めた一冊。「名探偵読本 シャーロック・ホームズ」

【ホームズ】シャーロック・ホームズの伝記?!「シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯」

【ホームズ】おすすめしたいシャーロック・ホームズ伝がこちら。ジューン・トムソン著「ホームズとワトソン 友情の研究」

スポンサードリンク

2 件のコメント

  • こんにちは。
    「名探偵読本1:シャーロック・ホームズ」は絶版になっているので、古本屋で探すしかないですね・・・。
    これの後継本で、「優雅に楽しむ新シャーロック・ホームズ読本」 http://www.bk1.co.jp/product/22153/p-yuseum96807 がありますが、これは著作権の関係で「名探偵読本」からカットされた部分が結構多いんですよね。(もちろん、新しく追加された記事もあるけど。)残念です。

  • Yuseumさん、お久しぶりです。コメントとNiceありがとうございます。さらに耳寄り情報まで。「名探偵読本・・・」の方は、本屋のカバーつけたままだったのは覚えているのですが、そのせいか表紙も覚えてないんです。絶版ということであれば、ますます探し出したいところです。後継本の方も入手してみようと思います。

  • Yuseum へ返信する コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください