【読書】リスクのない趣味は無意味なのか?村上龍「無趣味のすすめ」を読む

無趣味のすすめ

村上龍さんの小説は読んだことがないのですが、カンブリア宮殿は好きで良くみています。

そんな彼のエッセイ集を読んでみました。

 

趣味の世界には人生を揺るがす出会い・発見がない? 

タイトルにもなっている無趣味のすすめ。

村上さんは趣味と仕事についてこのように言っています。

趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出逢いも発見もない。(中略)真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それらはわたしたちの「仕事」の中にしかない。(P9〜10)

これが「無趣味のすすめ」の真意です。リスクのない趣味をいくらやっても何も得られない。新の達成感はお金のやりとりをする仕事にしかないということ。

逆に好きで好きでたまらない何かをもっていれば、自然にプロを目指すだろうというのが彼の考え方のようです。

 

趣味を仕事にする?

趣味といえるくらい好きで仕方がないものが仕事に直結したら、きっと仕事もうまくいく、というのはこれまで会ってきた人を見ていても思いますし、いろんな成功本にも書いてあります。

しかし、いくら好きでもプロになるためには能力や環境、機会が揃わないとなかなか難しいこともあると思います。それでも真の達成感を得るためには好きな事を仕事にする覚悟が必要と言うことでしょう。

 

自分を振り返ると好きなことというかやりたいと思っている分野を仕事にできているし、いろいろな国にいけるというのも旅行好きの自分には合ってると思います。

とはいえ、他に好きでやっている趣味がないかというと、結構あるんじゃないかと思ったり。それも複数。

好きな事(興味があること)が複数あったとしても、そのすべてを仕事にするのが村上さんのスタイルだそうです。キューバ音楽も実際にアーティストを招いて日本で公演したりと仕事になっています。

 

私の趣味はもしかしたら好き度が足りない?もっと真剣に突き詰めて、フルタイムの仕事ではないまでも、きちんと対価をいただけるものにまでしていくべきなのでしょうか?

シャーロック・ホームズが好きなら本を出版するとか。

ゴルフが好きならプロゴルファーを目指すとか。

読書が好きなら・・・・

・・・椎名誠さんの本で、彼が読書が好きなので1日中本を読んでそれが仕事になるという妄想をして、それを小説にしたものがあったのを思い出しました。

この中の日本読書公社というやつ。

これは小説の世界なので、現実に読書するだけで仕事になるというのはちょっと想像しがたいのですが、書評を仕事にするというのはありえますね。でも読みたくない本も読まなければならくなるとすると、それはもう好きとか嫌いではないですね。

フルタイムではなく、ブログに好きな本の書評を載せて、アフィリエイトで稼ぐというのが一つの形かもしれません。

 

フルタイムの仕事を抱えていると、別のことを仕事として行うというのはなかなか難しそう。今の仕事をしたままプロゴルファーは目指せないし。

突き詰めると、余暇の時間をつかってまでも達成感を得たいと思って仕事をやること、にも繋がりますね。会社だったらブラックと言われそうですが、自営業であればそういうライフスタイルも十分ありでしょう。

 

とはいえ、今は昔よりもさまざまな仕事のアイデアを活かせる環境にあるので、本当に好きなことをフルタイムでないまでも仕事にしやすくはなっているんだと思いますので、あとは努力次第ということですね。

 

その他良かったところ

表題になっている他にもたくさんのエッセイが収録されています。彼の日常や考え方なども分かって興味深いです。面白いと思ったのは次のようなところ。

  • 「充実した仕事のためには心躍るオフの時間が必要だ」というのは、無能なビジネスマンをターゲットとして、コマーシャリズムが垂れ流し続ける嘘である。(P64)
  • そのファッションだけが相手の印象に残るビジネスマンは、私は無能です、とアピールしているのと同じだ。(P75) 
  • どんな職業の人でも、読書をするかしないかが問題ではなく、どんな情報を自分は必要としているのかを自分で把握できるかどうかが問題である。(P92)だから、どんな本を読めばいいでしょうか、と他人に聞くような人は最初から可能性がない。(P94)
  • リーダーになるのは、「どういう対応策をとるか」わかっている人だ。(P103)(中略)リーダーは、「どこに問題があるのか」「何をすればいいのか」分かっている人でなければならない。(P104)(中略)優先順位はどうなっているのか、結果が出なければどう責任をとるのか、そういった具体的なことを言わないリーダーは信頼できない。(P106)
  • 相手の立場に立ってみないと、つまり相手はどう考えるのだろうと想像力を働かせないと、交渉などできない。(中略)相手の立場に立って考えるのは非常にむずかしい。まず相手に関する情報を集めなければならない。相手の立場に立って考えることができて、双方の条件を把握すれば、戦略がきまり、より有利な妥協点が浮き上がる。(P124)

ビジネスに直結する考え方について多く述べられていることに驚きました。カンブリア宮殿で多くの経営者と会っていることもあるのかもしれません。それ以上に、小説家はものを突き詰めて考えて言葉にしていく職業でもあるので、世の中を見る目も深く鋭くなるのでしょう。

 

Tomo’s Comment 

一編一編が短いので、さっと読めてしまいますが、考えさせられるフレーズは多かったと思いました。

 

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11 件のコメント

  • >お茶屋さん、こんばんは。
    ものの見方は向上したいです。そして考えたことがこんな風にまとめられるようになりたい・・・。

  • >piattopiattoさん、こんばんは。
    ショートエッセイなので、それぞれはフンフンというところが多いのですが、こうやって抜き出してみないと忘れてしまいそうでした。

  • 村上龍さんの本、何冊かは読みましたが、エッセイは読んだことがないです。(゚-゚;)ヾ

  • >Yukiさん、こんばんは。
    村上龍さんの小説読まれたことあるんですね。面白いのかな。いずれ読んでみたいと思います。

  • この本、気になっていました。
    村上龍さんの本は一時期よく読んでいましたが
    グロテスクな描写が苦手な作品もあったり・・でした(^^;
    趣味が仕事に・・・はやはり難しいこともありますよね(’’)
    私の場合、趣味とまでは言えませんが、今の仕事は
    やっているうちに好きになっていったパターンです。

  • >Paceさん、こんばんは。
    村上龍、グロテスクな描写があるんですか?もっとおとなしい感じかと思ってたのですが・・・。
    無趣味のすすめは、趣味をどう定義するかによるなあ、と読んでいて思いました。軽く好きなものも結構ありますから。

  • 「リスクのない趣味をいくらやっても何も得られない。達成感はお金のやりとりをする仕事にしかない」

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  • RT @TwinTKchan: 「リスクのない趣味をいくらやっても何も得られない。達成感はお金のやりとりをする仕事にしかない」

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