【ホームズ】コナンドイル財団公認のシャーロック・ホームズの新作、「モリアーティ」はストーリー展開が巧みで楽しめましたが、やや不満も

モリアーティ

 

アンソニー・ホロヴィッツによる、コナンドイル財団公認のシャーロック・ホームズの続編第二弾がこちらの「モリアーティ」

前作「絹の家」は、ホームズの61作目の続編とは言えないと感じましたが、話の展開などミステリーとしては楽しめました。

【ホームズ】シャーロック・ホームズの長編新作?「絹の家」 | Master of Life Blog Remaster

 

そんなホロヴィッツ版ホームズの続編である「モリアーティ」、読むのを楽しみにしていました。

 

「モリアーティ」のストーリー

いろいろとどんでん返しのあるお話になっていますので、あまり詳細を説明するのは憚られます。Amazonでのストーリー紹介ではこのようになっています。

 シャーロック・ホームズと彼の宿敵モリアーティが、ライヘンバッハの滝に姿を消した。事件を追って現場を訪れたのは、アメリカの探偵フレデリック・チェイスと、スコットランド・ヤードのアセルニー・ジョーンズ警部。二人は情報交換の末、モリアーティに接触しようとしていたアメリカ裏社会の首領、クラレンス・デヴァルーを捕らえるため、行動を共にすることとなる。ホームズの捜査方法を模倣するジョーンズ警部の活躍もあり、デヴァルーの正体へと迫っていく二人だったが――。『最後の事件』の前後には、何が起こっていたのか?探偵と刑事の「タッグ」を通して描く、衝撃的クライム・ストーリー! 

 

ホームズ作品に登場する警部の中では比較的影が薄いアセルニー・ジョーンズが主人公となっていますが、語り手はアメリカのピンカートン探偵社のフレデリック・チェイスとなっています。

物語の始まりはライヘンバッハの滝から。ここで二人が出会うことになります。

その後、モリアーティ亡き後のイギリスの犯罪会を支配しようとするクラレンス・デヴァルーを二人が追い詰めていくというのが話の流れ。

前作の3人称ではなく、本作ではチェイスの一人称となっているのが特徴でしょうか。

話の展開は前作同様とてもテンポが良く、ぐいぐいと読まされます。

 

ホームジアン的楽しみ

(ホームジアンというのはシャーロック・ホームズ研究家のイギリスでの呼び名で、アメリカや日本ではシャーロッキアンと呼ばれています。)

エラリー・クイーンをはじめ、多くの作家がホームズが登場する作品を書いてきています。パスティーシュとかパロディと呼ばれています。

ホームズとワトソンを面白おかしく使ったパロディもあるのですが、私が好きなのはオリジナルの60作品の世界観や人物像を忠実になぞって作られたもの。一推しはジューン・トムソンのシリーズです。

 

本作「モリアーティ」はそうした意味ではホームズの世界観にある程度忠実であるとは言えるものの、ホームズの探偵としての優秀さがやや薄められている点に不満がありますし、オリジナルに登場した人物が再登場するのはいいのですが、その行く末を描いてしまっているのもホームジアンとしては受け入れにくいところがありました。

また、原作と比べるとバイオレントな描写が多く登場します。現代のミステリーとしては特に違和感はありませんが、当時切り裂きジャックについて言及すらしていないホームズ作品と比べると違和感はあります。

一方で、オリジナルに登場するスコットランドヤードの警部たち、レストレードやグレグスンなどが登場するのは嬉しいところです。ジョーンズが彼らと会議をする様子などはオリジナルでは見られないものの、きっとこんな場面が繰り広げられたんだろうと思わせるものでした。

 

「恐怖の谷」がなかったことに?

一つ気になった点をあげておきます。

本編の中で、ホームジアン的に楽しめたのが上記でも述べたスコットランドヤードでの捜査会議。ここにお馴染みの警部たちが勢揃いするのですが、その出席者の一人がアレック・マクドナルド警部です。

マクドナルド警部は「恐怖の谷」というホームズ作品に登場する人物です。

ホームズはこれまでに二度もこの男を応援して成功させてやったことがあるが、そのたびにお礼などはもとより受けず、ただ理知的な喜びだけで満足していたから、相手のホームズを慕い尊敬することきわめて深く、しかもその気持をかくそうともせずに、なにかむずかしい問題がおこると、かならずしろうとのホームズの意見を求めにやってくるのだった。凡庸な人間は自分の水準以上のものには理解をもたないが、才能ある人物はひと目で天才を見ぬく。このころすでにホームズは天分からいっても経験からいっても、ヨーロッパ随一の探偵と認められていたのだから、その助力を仰ぐのを恥としないマクドナルドは、だから、探偵として十分の才能にめぐまれていたといえるのである。(「恐怖の谷」より)

 

なかなか優秀な警部で、ホームズにもお世話になっている様子が分かります。

 

この「恐怖の谷」の事件が起こったのは、諸説ありますが1888年もしくは1889年とされています。

マクドナルド警部がモリアーティと面会した話をホームズにしますので、少なくとも「最後の事件」(1891年)の以前に発生した事件である事は間違いありません。そして、本作「モリアーティ」は「最後の事件」の直後から始まるお話しです。

 

そんなマクドナルド警部なのですが、本作「モリアーティ」ではこんな風に言ってるんですね。

「 わたしはホームズ 氏に会ったことは一度もないが」マクドナル は強いスコットランド訛で言った。「 彼に感謝と敬意を表し、これを新たな出発点と考えたい。良かれ悪しかれ、彼はわれわれを独り立ちさせてくれた。」(「モリアーティ」より)

 

お世話になったホームズのことを会ったことがないというのはかなり矛盾しています。

さらに言うと、マクドナルド警部は「恐怖の谷」でピンカートン探偵社との関わりがあったにもかかわらず、チェイスに対して特にそのことに言及したりするシーンがないのもやや不自然に感じるところ。

つまり「恐怖の谷」については、発生しなかったも同然の扱いとなっています。

そしてもう一つマクドナルド警部に関しては同じような文脈で重大な疑問があるのですが、ネタバレになりますので、ここでは触れないことにします。

 

ちなみに「恐怖の谷」自体にも矛盾があって、「最後の事件」で、ワトソン博士はモリアーティ教授のことを知らない、と言っているのですが、実はそれ以前の「恐怖の谷」事件の際に、モリアーティ教授についてホームズから説明を受けていたのです。

 

Tomo’s Comment 

ストーリーは楽しめましたし、ホームジアン心をくすぐる部分はあったのですが、やはり公式続編というにはやや足りない問いのが感想です。

最後にどんでん返しがあるのですが、ストーリー的には楽しめるものの、ホームジアンとしてはやや後味が悪いのも残念なところ。

読んで良かったとは思うものの、評価は微妙・・・でしょうか。

 

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