私がこれまで最も影響を受けた本、ベスト3に間違いなく入るのが「深夜特急」です。
その「深夜特急」について、より深く知りたい時に参考になるのが、2005年に発売されたCoyoteという雑誌。充実した「深夜特急」特集を組んでいます。
深夜特急の魅力
さて「深夜特急」ですが、沢木耕太郎さんが実際に行った1年にわたる旅を描いた作品です。旅のコンセプトはインドからロンドンまで乗り合いバスで行くということなのですが、飛行機のストップオーバーで立ち寄った香港、タイに長逗留しているため、ユーラシア横断の旅といえるスケールの大きな旅となっています。
しかし、著者の沢木さんが旅行に出たのがもう40年前とは俄には信じられません。私が始めて読んだのは大学時代だったように覚えています。そのときすでに数十年はたっていたはずなのですが、そんなことは全く感じさせず、夢中になって読み、その後何度も何度も読み返しています。
未だに「深夜特急」が輝きを失わない理由は、この特集でもご本人が述べているとおり、旅で見たこと、体験したことを描いているのではなく、沢木さんがその見たこと・体験したことにどう反応し、どう考えたかを中心に描かれているからだと思います。人々の生活や環境は30年で大きく変わると思います。
事実、今この瞬間にパキスタンからトルコまでのルートを外国人がバスで旅行することは治安状況を考えると無謀以外のなにものでもありません。しかし、旅の刺激に反応する人の気持ちというのは40年では変わる物でもなく、その意味で「深夜特急」はいつ読んでも、沢木さんに共感を持って旅を追体験できるのだと思います。
深夜特急の影響
本書では、沢木さんが旅に出るにいたるまでの経緯、「深夜特急」が終了するロンドンから先の旅、「深夜特急」が出版されるまでの経緯(本にまとめられるまで10年かかっています)、沢木さんを取り巻く人々の視点からの「深夜特急」、「深夜特急」の旅に影響を与えた本、などが丹念に描かれています。
特に、ロンドン以降の旅は、「深夜特急」の印象的な最終章(次の旅への予感を感じさせる)を考えると、知りたいような知りたくないような複雑な気持ちでした。今回ついに読んでしまったという気持ちです。
「深夜特急」を読んでから、たくさんの旅行をしてきましたが、旅行スタイルは大いに影響を受けているように思います。基本的には一人旅であること、観光地巡りよりは普通の人々が暮らしている町をひたすら歩く、普通の人たちの普通の生活に興味を持つ(それは逆に外人である事、日本の普通を感じさせられるのですが)、気づきに対してノートをつける(今はブログに書く)といったことは、特に影響が大きいと思います。
現在、海外業務の多い職に就いて、数年にわたる海外生活を経験したり、頻繁に海外出張に出たりというのも、影響の一つなのかもしれません。
その結果として、(あるいは持って生まれた感覚ともあわさり)、沢木さんが深夜特急の旅の後に持つようになった感覚、
「自分はどこでも生きていくことができるという思いは、どこにいてもここは仮の場所という意識を生むことになってしまった」
を私も持ってしまっている、ように感じています。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
沢木さんが旅に出た26歳という年齢はとっくに超えてしまいましたが、未だに自分なりの「深夜特急」の旅に出たいという気持ちは持ち続けています。
放浪の旅ではないかもしれませんが、好奇心を摩耗させないよう常に何かを感じ取れる感性を持ち続けたい、そう思います。
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