シャーロック・ホームズについてあれこれ研究している人たちはシャーロッキアン(またはホームジアン)と呼ばれるのですが、私もそんな研究者の一人。
研究にもあれこれジャンルがありますが、シャーロック・ホームズが手がけた事件がいつ起こったものなのか、文面に現れたヒントをもとに解き明かそうとするのが年代学と呼ばれる分野となります。
この年代学を踏まえて作られたのが、シャーロック・ホームズの伝記ですが、有名なもので2作品あります。
ベアリング=グールドによる伝記
ホームズには60編の事件簿がありますが、上記のように根気よくいつ起こったのか調べて、時系列で並べたホームズ全集(しかも注釈付)を作成した研究者としてベアリング=グールドが有名です。
上記は60編の作品を、彼が考える順番で並べ替えたものとなりますが、この順番を基に書いた伝記がこちらとなります。
【ホームズ】シャーロック・ホームズの伝記?!「シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯」 | Master of Life Blog Remaster伝記ですので、ホームズの出生や晩年など、ホームズの話に出てこない部分については補っていかなければなりません。また、同時代に起きた大事件で描かれていないものについても触れていたりします。
ベアリング=グールドの伝記では、切り裂きジャックの事件にホームズがどのように関わったのか、についても描かれています。
ジューン・トムソンによる伝記
今回紹介したいのは、ホームズの伝記を違ったアプローチから編纂しています。
本書はそのタイトル通り、ホームズが手がけた事件よりもホームズとワトソンの関係の変遷を軸に、これまでの研究成果も参照しながら、ホームズとワトソンの生涯をたんねんに描いています。
作者のジューン・トムソンは女性のミステリー作家で、ホームズのパスティッシュ(贋作)も数作書いています。一部翻訳されていないものもありますが、こちらのブログでもいくつか紹介しています。
ホームズの伝記としては、上述のグールドのものが有名ですが、グールド独自の解釈や創作部分も入っているため、私としてはこちらの伝記の方が研究書的な観点からは、質が高いように思いました。
ホームズとワトソンの生まれについて簡単に触れた後に、本編でも触れられている最初の出会い(最初の作品である「緋色の研究」)以降のホームズとワトソンの人生を、いくつかのステージに分けて綴られます。(大きく分けると最初の同居時代、ワトソン結婚後、ホームズがライヘンバッハで死んだとされる時期、復帰後、晩年でしょうか。)
本作品の好感が持てる点は、オリジナルな作品の記述を基本にして、オリジナルから推測できない点は(先行研究の見解は引用しつつも)、あえて触れていない点です。丹念にオリジナルの記述を拾い、かつホームズとワトソンの関係に焦点を当て、さらに当時の時代背景も考慮に入れて、二人の生涯を描ききっています。
ホームズは今も生きているというシャーロキアンもいますが、本書では、記録はないもののすでにホームズは亡くなっているという立場を取っているところまで現実的な記述となっています。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
シャーロック・ホームズを読み始めて、少しシャーロッキアンというものに興味が出てきたときに読むべき本はいくつかあると思うのですが、本書もそんな一冊だと思います。
ジューン・トムソンさんの他の作品はこちらで紹介しています。
【ホームズ】パスティーシュの傑作「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」
【ホームズ】パスティーシュの傑作「シャーロック・ホームズのドキュメント」を読む
私も小学3年生で全巻読んでからシャーロッキアンですが、最近はホームズこそモリアティー教授だったと思えてなりません。まだまだ未熟者だったと痛感しております。
ホームズ=モリアーティ説は根強いみたいですよ。モリアーティに関する言及はすべてホームズが行っていてワトソンは見ていないというのが根拠のようです。もう一度、読み返して確かめるべきですね。
トラックバックありがとうございました。
ジューン・トムスンは謝辞でドイルをホームズとワトスンの「創造者」と書いているので、まともだなぁと感じました。(シャーロキアンに怒られるかな!)
Tomoさんは、ホームズが家族や少年時代の話をしたがらない点と女性嫌いな点についてどう思いますか? 私は正典の中でホームズが親子間や夫婦間の問題を見抜いて解決する様子を見ていると、愛情に恵まれた家庭や恋愛の経験がなくても(ないからこそ?)できるのか、あったからできるのか、どっちなんだろう??って思うんです。私としては「あった」派の気持ちですが、ジューン・トムスンは「なかった」派ですよねぇ…。
>ぐうたらぅさん、こんにちは。
確かにホームズが家族を語るシーンは兄のことを除いて皆無ですね。あ、フランス系の祖母の話もありました。イギリス人、特に昔の紳士の人たちってあまり家族のこととかしゃべらないものと漠然と思っていました。ワトソンも没落した兄の話をしてなかったみたいだし。お互いに聞かないと話さないという感じなのかもしれないですね。グールドの「ガス燈にうかぶその生涯」では、ホームズの幼少期についても(想像力豊かに)描かれていますが、確かにこのような暮らしをしたらホームズのような人ができあがるかなという感じでした。
個人的には愛情に恵まれた家庭の経験はあったんじゃないかと思います。ホームズの温かい本質はおそらく幼少期に形成された物だと思いうからです。恋愛については、おそらく現在と違う時代だったこともあり、おそらくなかったんじゃないでしょうか。でも、事件解明のためとはいえ、婚約までこぎ着けるということを考えると、役者としての素質はもとより、恋愛に関する知識はあったんでしょうね。
RT @tommasteroflife: 【ホームズ】おすすめしたいシャーロック・ホームズ伝がこちら。ジューン・トムソン著「ホームズとワトソン 友情の研究」 https://t.co/qM8dgYXGBU
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