【ホームズ】平山雄一さんの「シャーロック・ホームズ研究1」はホームズ研究に興味を持った人にお薦め。

シャーロック・ホームズ研究1

平山雄一さんは、私も所属している日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)の大先輩会員かつ、まだ日本人では数少ないベーカー・ストリート・イレギュラーズ(BSI)の会員でもある、日本有数のシャーロッキアン。

そんな平山さんの「シャーロック・ホームズ研究1」が届いたので、早速読でみました。

 

シャーロック・ホームズを研究するということ

シャーロッキアンというと、堅苦しいオタク的な世界を想像する方がいるかもしれません。そして、JSHCもそんなマニアックな人々の集いだと思われている方も多いかもしれません。

しかし、実はそんなことはなく、シャーロック・ホームズを多様に愉しむ人たちの集まりにすぎません。

ホームズに関連する何かが好きであれば、だれでも入れるのがJSHCで、そのメンバーの好みも多様。

ホームズの正典と呼ばれる60作品をひたすら愛する人もいますし、ホームズやそのそっくりさん探偵が出てくるパスティーシュ・パロディが好きな人、映像化されたホームズ(古くはジェレミー・ブレットのドラマ、最近では、ロバート・ダウニーJr、ベネディクト・カンバーバッチ、そして日本では竹内結子、ディーン・フジオカ)が好きな人、ホームズグッズが好きな人、様々な各国語訳や違った訳者による邦訳を集めるのが好きな人、子供向けホームズが好きな人、名探偵コナンが好きな人、等々、多種多様な人が集まっています。(これ以外にもありますし、複数当てはまる人も。)

ハードルが高いと感じている人(特にちょっと年配の人)の中には、かつてJSHC入会に論文提出が必要とされていたということを挙げる人が多く、私もそのような記載を読んだ記憶もあります。実際は当時も論文については提出しなくても入れたようですし、いまではそのような入会の決まりも記載されていません。

 

上で書いたように、論文を書くなどの、いわゆる研究をするということだけではないのがホームズの楽しみでありJSHCのありようなのですが、逆に、ちゃんと研究をしてみるという愉しみもこれはこれで一つのジャンルであり楽しみ方なんだと思います。あえて遠ざける必要はなく、ちょっとした疑問について調べて盛るだけで立派な研究になるものです。

 

表現するのが難しいのですが、すごく狭義の(特に欧米の古くからの?)シャーロッキアンのあり方というのは、ホームズが実在した人物であるということを前提に、実際に様々な学問領域で用いられている手法を用いて研究をしてみる、というお遊びであるというのが一つの側面であると思っています。(もちろん、真面目度合いや前提の重視度合いは様々なのですが)

私の個人的な好みも、こうした真面目な(ふりをした)研究活動をしてみたいというところも大きいので、ホームズゆかりの地を探る、いわゆる「地理学」を中心にホームズを愉しんでいます。(といっても、これだけに縛られるつもりもないので、現代版シャーロック・ホームズのカンバーバッチ版やディーン・フジオカ版にものめり込んだり、グッズ集めも愉しんでいます。)

 

ということで、前置きが長くなりましたが、私が理想の一つとしている研究というスタイルを、遙か昔から実践しているのが平山雄一さんなのだと勝手に思っており、その研究姿勢から学ぶことが多くあります。

 

「シャーロック・ホームズ研究1」

こちらの本は、2020年6月刊行ということこで、発刊そのものは非常に新しい本なのですが、内容は平山さんがこれまで各所で発表してきた論文集となっています。その多くは英語で発表されたもので、今回、日本語となって発表されているところは非常に貴重なものだと言えるでしょう。

海外の様々なホームズクラブに所属して、その機関誌に投稿もされているというところもすごいのですが、そんな成果の一つが本書にも収載されている「高名な依頼人の正体」という最初の論文です。カナダのシャーロッキアン団体「トロントの靴職人」が、高名な依頼人が誰なのか解明しようというコンテストへの応募論文だったそう。

 

海外誌への投稿というのも価値があるのですが、それ以上に「Shoso-in Bulletin」という英文ホームズ研究誌を自ら立ち上げたというのが、日本のシャーロック・ホームズ研究の歴史でも偉業と言って良いかと思います。

私も、すべての巻がそろっているわけではないのですが、多くの巻を譲っていただき、時間があるごとに少しずつ読み進めています。まさにホームズを研究しているといった内容で、学ぶことしきり。

そんな成果のいくつかも本書で日本語となって収録されていますので、手軽に読めるようになっています。

 

研究、研究って書いてきていますが、ホームズの研究って、何を研究するんだろうと思った方もいるかと思います。

そんな方々のために、本書収録のテーマを紹介しますので、ああ、こういうことを研究するんだという理解の一助となればと思います。。

全部で8編の論文を掲載。

  1. 「高名な依頼人」の正体

  2. 『コナン・ドイル殺人事件」徹底解剖

  3. ジョン・クレイの祖父は誰か?

  4. なまけものの暗殺者達

  5. ホームズの肖像

  6. シャーロックホームズの義歯

  7. ワトスン博士の学位について

  8. ボヘミア王の正体

 

 

それぞれ、関連する歴史的事実を丹念に調べ上げ、また欧米の研究者の見解なども含め論考されているところもなかなか貴重と言えます。

 

いわば歴史の研究なので、もちろん解釈の違いはあり得ると思いますが、周辺情報を丁寧にあつめているので、「ほかのあらゆる可能性がすべてだめだとなったら、いかにありそうもないことでも、残ったものが真実なのだという例のふるい原理を、ここで思いだす必要がある。」にまさに合致した手法だと思いました。

 

個人的に興味があったのは、ワトスン博士の学位について。イギリスの100年以上前の学位なので、現在とはかなり体系が違っているのですが、当時の医師達の学位を調べ、医学博士で間違いないと結論づけています。

正典重視派としても、書かれていることがまずは正しいと仮定しているため、検証の結果、間違いないというというのはあるべきホームズ研究なんだろうと思っています。

書かれていることと矛盾することをあえて唱えようとするのも注目はされるかもしれませんが、個人的にはちょっと飛躍しすぎていることが多く好みではありません。

正典に書かれていることは、よほどのことがない限り正しいのであり、その正しさを証明するのがホームズ研究である、と、思う自分があります。

 

Tomo’s Comment 

ということで、ホームズ研究ってどんなものなの、どうやってやるの、という疑問を持つ人は本書を是非一読することをお勧めします。

繰り返しますが、こうした研究はシャーロッキアンの一側面であり、すべての(広義の)シャーロッキアンが取り組むべきものとも思いませんが、一ジャンル、しかも王道のジャンルを知るという意味では本書を読むことで理解が進むのは間違いないでしょう。

私もホームズにまつわるロケーションを調べる地理学だけではなく、他の分野でも研究してみたいと密かに準備中です。来年春のJSHCセミナーで発表できるよう、少しずつ準備を始めているところです。

 

ところで、タイトルに1とありますので、2以降にも期待していいんですよね。すごく愉しみにしています。

 

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