【ホームズ地理学】マニアックな2つの領域が交わる愉しみ。「シャーロック・ホームズの鉄道学」はマニア必読。

シャーロック・ホームズの鉄道学

英国は鉄道発祥の地で、ホームズが活躍した19世紀後半に鉄道網整備の絶頂期を迎えました。ホームズ物語でも鉄道を使うシーンが頻繁に登場しています。

 

 例えばストランド誌にホームズの短編が掲載されたときに挿絵を描いたSydney Pagetによる下のような絵。

これは「白銀号事件」で、ホームズとワトソンが一等者の客室で事件について話しているシーンです。

ホームズのイメージであるディアストーカー(帽子)とインバネスコートを身につけています。

実は、本文中ではこの格好をしているという記載は全くないのですが、この挿絵によって後世のホームズのビジュアルが決定づけられてしまったのです。

そんな逸話以上に、ホームズとワトソン博士が鉄道に乗って事件現場に赴く様子が描かれていて印象的な一枚となっています。

 

今回はそんなホームズと鉄道の関係を深掘りしまくった一冊、「シャーロック・ホームズの鉄道学」を紹介したいと思います。

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ホームズと鉄ちゃんといえば、オタクの二大巨頭とまではいかないかもしれませんが、マニアック度ではなかなかいい線を行ってる二つの世界。この二つを掛け合わせるとどんな世界に深まるのか、要注目です。

 

ホームズと鉄道

ホームズ作品には、本当に鉄道が多く描かれています。依頼人がホームズの助けを借りに鉄道で駆けつけてくることも多くありますし、ホームズが事件現場に鉄道で向かうことも多々ありました。中には鉄道を利用して証拠隠滅を図った事件もあります。

 

ロンドンに住んでいたとき、地下鉄(チューブ)はよく利用していましたが、鉄道についてはあまり利用する機会がありませんでした。留学生なのであまりイギリスの地方に遊びに行くことも少なかったですし、まとまった休みは海外(モロッコとスイス)に行ってしまったので時間がとれませんでした。

料金の仕組みも複雑で、いつ買うのがお得なのかもよく分からず、当日券を買って割高な料金を払って悔しい思いもしました。

 

その後、ホームズのことをあれこれ調べていくと、ホームズ作品をより良く理解するためには鉄道の知識は欠かせないと思うようになります。英国の鉄道についてもっと知りたい、と思っていた時に見つけたのがこちらの本でした。。

 

ホームズの鉄道学とは

本書の内容は、英国鉄道の成り立ちから始まり、ホームズ作品の中で鉄道が重要な役割を果たした6つの事件をとりあげ解説しています。

その6つとは『ブルース・パーティントン設計書」、「白銀号事件」、「技師の親指」、「まだらの紐」そして「最後の事件」と「最後の挨拶」

さらにホームズが解決した事件と類似する後世の推理小説やホームズ後の英国の探偵もので鉄道に関係する事件を紹介しています。

 

ホームズにも英国の鉄道にも興味がない人にとっては読み進めるのがつらいかもしれませんが、ホームズ作品を読み終えて、さらに当時の英国について知りたいと思い始めた人、そして鉄道に興味がある人にとっては格好の本だと思います。入門書と言うほど簡単ではありませんが・・・。

 

取り上げられている事件はいずれも鉄道が印象的に登場しています。それぞれの記載について、当時の路線、時刻表と照合して矛盾がないか、あったらどう説明すればよいかというアプローチで各事件と当時の鉄道の関係が分析されています。

 

いくつかの説明については、鉄道学的には無理がないのかもしれないけどシャーロッキアーナとしてはちょっと飛躍させすぎと感じるものもありました。

一例をあげると「まだらの紐」で、依頼人が早朝の便で来たことをホームズが推理で当てるというシーンがあります。

当時の時刻表によれば、依頼人の最寄り駅からこの時間帯にロンドンに到着できる便はなかったため、実は依頼人が嘘をついていて、事件の構図もホームズが解決したとおりではなく実は依頼人が仕組んだものだったのではと推理しています。

これだと鉄道についての矛盾は解消されるのですが、ここからさらに飛躍して、実はホームズが探し当てた犯人が真犯人ではない、とまでなってしまうのは、やや私の好みのアプローチではありません。

ワトソン博士が書いた記載は基本的に正しいと考えたい私としては、にわかには受け入れがたいものも。とはいえきちんと反論するためには、もう少し鉄道学を学んでから論考を進めていきたいと思います。

でも一方で、こうした発送の飛躍がシャーロッキアーナの楽しみでるのも否定できないところ。いかに魅力的な新しい説を提示できるのかがシャーロッキアンの楽しみになっている感もあります。

私はどちらかというとエビデンスベースで考えたいので、理屈として説明がつけられるだけつけたいというのが根底にあります。理系の大学院を出たからかもしれません。

でも、正解というものはなくて、単にホームズ研究の向き合い方の違いということなんですね。

 

Tomo’s Comment 

著者の松下さんは素晴らしいシャーロッキアンで、イギリス留学中にメールやブログのコメント欄でやりとりをさせていただきました。そして、帰国後に一度お会いする機会もありました。

ベーカー街のヴィクトリア時代の下水整備状況について調べてほしいとのお話もいただいていたのですが、果たす前にライヘンバッハの滝の向こう側に行かれてしまいました。

日本シャーロック・ホームズクラブに入会したのは2006年でロンドン・シャーロック・ホームズ協会も同じ年に入会しています。

こうしたクラブに所属することで、尊敬するシャーロッキアンの方々にお会いする機会があったことはとてもラッキーだったと思います。ただ、長年活躍された先輩シャーロッキアンの方々とは、一期一会となってしまうことも多く、その点ではもっと早くこうしたクラブに入っていたら良かったと思うこともしきりです。

松下さんにもらった宿題は人生の宿題だと思いますので、いずれきちんと調べてホームズの家の上水・下水の仕組みがどうなっていたのか、検証してみたいと思っております。

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英国鉄道についてはこちらでも紹介しています。

【旅行】ロンドンからダブリンまで列車とフェリーを乗り継いで行く方法(1)チケットの予約と受け取り

【ホームズ】ベーカー街駅で撮ったホームズの写真が「世界の車窓から DVDブックNo.15 イギリス」に掲載されています

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