【今日の授業】紛争と保健

今日のテーマは二本立てで、「Burden of Conflict」と「Strengthening Health Service in complex emergency」というもの。

授業の途中でクイズがあって興味深かったのでまず紹介したいと思います。

次のうち間違っているのはどれか?
1. 武装紛争の件数は増えている。
2. 戦争はさらに危険(命を失う)になってきている。
3. ジェノサイド(集団殺害)の件数は増えている。
4. 人類への最も危険な脅威は国際テロリズムである。
5. 5百万人の人々が90年代に戦争で亡くなった。
6. 難民の80%は女性と子供である。
7. 女性は戦争の一番の犠牲者である。
(解答はのちほど)

まずは、Burden of Conflictということで、戦争は子供や他の人にとってhealthyではないというところから始まりました。

戦争(War)とは、1000人以上の暴力による死亡をさし、紀元前3600年以来、290年以上戦争がなかったことはなく、1480年以降、戦争・紛争がなかった年は52年しかなく、市民の死亡数は増えてきています。近代の戦争では、市民への暴力、飢餓等も合法な戦争の一部であると変わってきているので、女性や子供、老人のリスクは高まっています。

戦争・紛争は健康にも直接的、間接的に影響し、DALYの喪失について、戦争が最大のものとなっています。

戦争による死亡率を測るために使われるのがExcess mortality。これは、戦争による死亡率から平時であったと仮定した場合の死亡率を引いた数値となり、/1000/yearか/10000/dayが単位として使われます。ただし、データをとるのが非常に難しいとのこと。この値が1/10000/dayを超えるとemergencyであると見なされます。(Emergency threshold)。これはサブサハラの死亡率の倍として想定しているため、他の地域ではこのレベルに至る前に相当な被害が出てしまうという弊害もあるそうです。

戦争により多くの人が影響を受け、貧困や統治の失敗と関連づけられ、健康に多大な被害を与え、直接、間接に大きな被害を与え、データを取るのが難しい、というのがまとめでした。

引き続き緊急時の保健サービスの強化というトピックに移りました。複合的な緊急時というのは、死亡率、罹患率が向上し、健康へのリスクが増大します。緊急時、特にキャンプのような状況では、10のトッププライオリティアプローチが有効であるとされています。それは、Initial Assessment, Measles immunisation, Water and sanitation, Food and nutrition, Shelter and site planning, Health care in emergency phase, control of communicable diseases, Public health surveillance, Human resoureces and training, coorinationです。さらに最近は、Reproductive HealthとPsycho-social careの二つが加えられています。

緊急的な支援と恒常的な支援とでは性質が異なります。緊急支援では、Excess mortalityに基づいたモニタリング評価が行われ、緊急援助団体によってオペレーションが行われます。一方で恒常的な支援では、スケールが変わってきて、リソースはさらに制限され、既存・過去の保健サービスとより連携することになります。

保健サービスの分析は、開発途上国であれば保健ニーズ(隠れたものも含め)を考えれば良いのに対し、紛争国では、これに加え、緊急時のニーズ、紛争で悪化したニーズ(感染症など)、付加的なニーズ(心理的・社会的ニーズ、負傷など)も考慮する必要が出てきます。

途上国で起こる緊急的危機状況というのは、上記の緊急支援と恒常的な支援のどちらかに分けられるというものではなく、その状況によって、この二つの中間に位置すると考えられています。これを分析したのがVan Dammeで、彼はPHCとEmergency Medical Assistanceとの違いを論じ、その段階を5段階に分ける分析枠組みを提示しています。

この枠組みは、Context, Social Situation, Sanitary situation, Health situation, Objective, Approachの6項目ごとに、緊急支援とDevelopmentの間のどの段階にあたるかを見ていくというものです。

この後の演習では、架空の国のデータが与えられ、この枠組みを使って、分析することが課せられました。この国は、ちょうど中間に位置する国という設定で、紛争解決の見込みが立って、政府が運営できていなくNGOが運営支援していた病院・クリニックを、もう一度政府が運営することになったという状況で、それに当たってUser Feeを導入しようという段階でした。この状況で、NGOとしてどうしていくか、というのがメインの課題。保健サービスの自立のためには、User Fee以外に適切な方法は、この状況ではなさそうなため、我々のグループの結論としては、政府の方向性は尊重し、NGO独自の病院などの運営をするということはしない方がいいということになりました。どこまで、支援を続けるかということについては、少し意見が分かれましたが、User Fee導入後、このシステムがある程度回せるようになるまで、ということになりました。NGOの性質(緊急支援に特化)によっては、User Fee導入時に立ち去るというオプションもあると思いますが、おそらく状況はひどいこと、User feeを導入して回せるキャパがないであろうことから、時間を区切ってある程度は残ったほうがいいという結論となりました。

今日もこの議論に基づき、二人がレポートをまとめることになります。評価されるので、みんな真剣に見ることになりそうです。私の番は来週の予定。

最初のクイズの答えですが、正解はすべて間違い、だそうです。統計的に見ると、紛争そのものや紛争による志望者数は減少している傾向にあるそうです。意外でした。

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