【ホームズ】ホームズ研究に目覚めた一冊。「名探偵読本 シャーロック・ホームズ」

名探偵読本シャーロック・ホームズ

 

シャーロック・ホームズを初めて読んだのは小学校4年生くらいだったと記憶しています。確か「バスカヴィル家の犬」の子供向けの物だったと思います。

その後子供向けのシリーズにあるものは全て読んでさらに60編の長・短編を読んだのは高校生くらいだったと思います。

それだけであればただのホームズ好きで終わっていたと思うのですが、ホームジアン(又はシャーロッキアン)の道に踏み入れたのは、ある本を読んだのがきっかけでした。

それがこの「名探偵読本1シャーロック・ホームズ」という本です。

 

ホームジアンの4段階

この本にも書いてありますが、ホームジアン(シャーロッキアン)への道にはいくつかの段階があるようです。

第一段階(小学生級):ストーリーの面白さやホームズの正確に魅せられて、ホームズファンとなり、物語のあらすじや登場人物を暗記したていど。

第二段階(中学・高校級):ホームズの性格の変化とか、ワトスンが何回結婚したか、など個々のストーリーを知っているだけでは駄目で、六十事件全体を総合的に考えないと解けない問題を探ろうとする。

第三段階(大学級):ホームズやワトスンが実在の人物であることを疑いなく、これらの人物や事件を産んだヴィクトリア朝の社会情勢や思想などを調べはじめる。

第四段階(大学院級):万巻の原書を読み比べて検討し、悪漢モリアティのモデルはニーチェで、サディアス・ショルトーの原型はオスカー・ワイルドだ、などというところまで追求する。 (P2 シャーロック・ホームズ入門より)

普通は小学生級で終わってしまう人が多いと思いますので、中学・高校級まで進む人はなかなか少ないと思われます。これは見方を変えると、小学生級はホームズ作品を読むだけで到達できるのですが、中学・高校級に進むためにはシャーロック・ホームズのホームジアン(シャーロッキアン)的読み方に関するガイドが必要となるということかと思われます。

私の場合は、この段階に進む時のガイド的役割を果たしたのがこの「名探偵読本1シャーロック・ホームズ」だったと言えます。

 

「名探偵読本」に書かれていること

この本の内容ですが、日本及び欧米のシャーロッキアンの方々がホームズ研究の中でも代表的な題材について取り上げた評論文、ホームズ全60作品のダイジェスト、ホームズ研究に役に立つ文献の紹介、そしてロンドンの写真などのヴィジュアルの資料がコンパクトにまとめられています。

つまり、ホームズ研究の最初の一冊としてはまさに適切だったと言えると思います。

残念ながら、本書はすでに絶版となっていて、私も所有していた物が見つからず、やっとYahooオークションで購入できました。

当初はパシフィカという出版社から出ていたのですが、その後西部タイムスに版権が移ったようです。パシフィカの版を手に入れたのですが、ペーパーバックのような作りでした。私の記憶が確かであれば、表紙や背表紙が固くてもう少ししっかりした作りだったと思いますので、もしかしたら私が持っていたのは西部タイムス版だったのかもしれません。あるいはその後再編集された「優雅に楽しむ新シャーロック・ホームズ読本」を持っていたのかもと思ったのですが、これは2000年に出ていますので、時代的にはちょっとあわないようです。

Amazonでも昨年は売りに出ていたのですが、当初の配達期間を大幅に過ぎてもまだ到着しておらず、捜していますというメールが時々来るのみです。現在は中古のみの販売になっているようです。

今回改めて読んでみると、私が記憶していた論文が二つほど入っていないように思いました。一つは、ベーカー街221Bの場所に関する考察、もう一つは何の事件か忘れましたが、事件発生年月日を当時の天候記録から推測した論文です。もしかしたら西部タイムス版に入っていたのかもしれませんし、他の本で読んだのを間違って記憶しているのかもしれません。いずれにしても、ホームズ研究というのはこうやってやるんだという方法論が分かって、ホームジアンの道に進むきっかけとなったと今でも記憶していますので、今回購入したもので読めないのが残念です。

また、ホームズ作品60作のダイジェストが収録されているのですが、作品毎に4問のクイズがついていて回答を送ると記念品がもらえることになっていました。私も高校生か大学生の頃にこの4問のクイズの解答を一生懸命ノートに書いたのですが、当時もっていた「シャーロック・ホームズ大全」に、「恐怖の谷」と「事件簿」が入っていなかったためここを抜かしたままにしてしまい、ついぞ送ることができなかったことを覚えています。

このとき送っていたら、もっと早く日本シャーロック・ホームズ・クラブに入会していたと思うとちょっと残念です。

 

Tomo’s Comment 

思い出の一冊を手に入れられて満足しています。

絶版になってしまっていますが、ホームジアンを増やすためにはこうした本は必要だと思います。

類書はいくつかあるのですが、完成度や深さという点ではこの本が最も優れていると思います。復刊してもらいたいですね。

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2 件のコメント

  • こんにちは。
    1999年にJSHCの有志がまとめた「実用シャーロッキアナ便覧 ホームズ・ドイル研究書案内」によると 西部タイム版はパシフィカ版にp229〜p232,p240〜p251(パシフィカ版以後に出た研究書とパスティッシュ書誌関係)を追記した本のようです。
    ハードカバーで「ベーカー街221Bの場所に関する考察 」と「事件発生年月日を当時の天候記録から推測した論文」が載っている本と言うと1980年刊講談社「シャーロック・ホームズ17の愉しみ」に「事件発生年代に関する問題(S・C・ロバーツ) 」そしてベイカー街の場所についての考察「ベイカー街の裏庭(バーナード・ディーヴィース)」が載っています。
    参考までに
    「シャーロック・ホームズ研究書と解説書の文献リスト 」があります。
    http://www5.ocn.ne.jp/~shworld/01_sh_book/sherlockian.html

  • みっちょんさま
    こんにちは。情報ありがとうございます。先ほど本棚を見たら「シャーロック・ホームズ17の愉しみ」の文庫本がありました。早速読んでみたところ221Bの場所の考察はまさにこの「ベイカー街の裏庭」でした。天候記録から年月日を推測した方は、どうも「事件発生年代に関する問題」ではないような気がします。数日間の天候の記録と風向きの記録が書いてあって、作中で述べられている天候がそれに当てはまるかどうかといった検証をしていたように記憶しています。
    ところで「ベーカー街の裏庭」はデーヴィースさんが書かれていたんですね。昨年お会いしたときに知っていればそのお話もできたのにとと思い残念です。

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