座右の書のひとつとして「深夜特急」を挙げましたが、この本はその深夜特急の旅を俯瞰した沢木耕太郎さんの回想録です。
沢木さんの旅
この本には、深夜特急の旅=香港、タイを経て、インドからロンドンまで乗り合いバスで旅をした旅、に至るまでの過程、旅を終えてから「深夜特急」を書くにいたった経緯が書かれるとともに、沢木さんにとっての旅がなんなのか、彼の考えが語られた本です。
沢木耕太郎さんにとっての旅は、「家ヲ出テ、遠キニ行キ、途中ニアルコト」(大槻文彦)だそうです。
「深夜特急」でも、Being on the wayという言葉がよく登場していました。
具体的な旅の様子は「深夜特急」で描かれいますので、本書では深夜特急の旅そのものはあまり触れられていません。
その代わり、幼少時の松坂屋への旅を皮切りに、高校時代の離島への旅など、沢木さんにとっての旅履歴から始まり、 彼の旅という概念への考え方が綴られていきます。
「深夜特急」でも書かれていましたが、沢木さんが影響を受けた言葉に、
「男は26歳までに一度は外国に出た方がいい」
という言葉があるのだそう。
その言葉に導かれるように沢木さんは26歳で仕事も辞めて、ユーラシアの旅に出発しました。
20代前半に「深夜特急」に出会った私も、26歳までには海外に出なければならないとの思いが常に心の底にありました。
幸い、海外を主戦場とする仕事に就けたこともあって、27歳の時に仕事でとある南国に駐在することになったため、仕事を辞めて旅に出ることはありませんでした。
もし海外と関係のない仕事をしたまま26歳を超えていたら、あるいは仕事を辞めて旅に出ていたかもしれません。私にとっては、それほど「深夜特急」は影響力のある本でした。
まだ仕事は辞めていませんが、出張の多い仕事で始終旅をしているようなものであるため、旅欲は満たされているのかもしれません。
ただ、出張というのはほとんどの時間を仕事をしている状況であり、異国体験は十分には満たされないとの思いもあり、未だにいろいろなところに旅行もしています。(最近は日本の旅により関心が増してきていますが。)
旅立つ前の怠惰な気持ち
そんな旅好きな私ですが、その割に家にいたいという気持ちも強くて、出かけるのが面倒くさい気持ちになってしまうことがあることも否定できません。
そんな怠惰さに自責の念にかられることもありました。
しかし、この本の中で、沢木さんがこんなことを言っているのを読んで、少し気分が楽になりました。
「ジョン・スタインベックも「チャーリーとの旅」の中でこんな風に書いている。 長い期間にわたって旅を計画している、心中ひそかに、出発したくないという気持ちが起きてくるものである。私も、いよいよ出発の日が近づくと、温かい寝床と居心地のよい家がしだいにありがたくなり、愛する妻がいいようもなく大事になってきた。(中略)これは長い旅に出ようとするときに、多くの人が味わう心境であるように思う。(中略)どうして、そんな旅に出かけなくてはならないのだろう、と何度自分に問いかけたかわからない。だが、その答えはなかった。」
自分だけではないということを知り少し安堵しました。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
深夜特急とあわせて座右の書となりそうです。
「深夜特急」についてはこちらでも
【読旅】沢木耕太郎さんの深夜特急から20年後のバス旅行の結末は?「一号線を北上せよ ヴェトナム街道編」
【旅】『深夜特急」の世界をさらに知るために最適の特集!「深夜特急」ノート (Coyote No8)を読んでさらに旅に出たくなった