【#月9でシャーロック】アイリーン登場?新月9ドラマ「シャーロック」第二話もシャーロッキアン的に見てみる

シャーロック アントールドストーリーズ第二話

ディーン・フジオカ、岩田剛典、 – (C) フジテレビ (画像クリックで公式へ)

 

先週開始の月9「シャーロック」、アイリーン・アドラーにあたる「あの女」が登場しそうな予告で楽しみにしていましたが、みなさん感想はいかがでしたでしょうか。

「シャーロック」のストーリーについては、様々な感想をお持ちかと思いますが、当ブログではシャーロッキアン的観点から、原作のシャーロック・ホームズネタにどんなものがあったか、解説していきたいと思います。

シリーズを貫く基本的な事項については第一話のまとめの方に書いていますので、こちらもご覧いただければと思います。

 

解説の都合上、「シャーロック」のネタバレになっていることもありますので、未見の方はご留意ください。シャーロック・ホームズの原作のネタバレもしていますので、困るという方は「シャーロック・ホームズの冒険」に収録されている「ボヘミアの醜聞」を先に読んでいただければと思います。手元に本がないよ、という人はこちらでも読めます。

 

ダーリントンの替え玉事件

今回モチーフとなっているのは「語られざる事件」のうちの「ダーリントンの替え玉事件」。

ホームズの最初の短編だった「ボヘミアの醜聞」でちらりと触れられます。

「あれが何の役にたったのだい」

 

「きわめて大切だった。女というものは、自家が火事と知ったとたんに、いちばん大切にしているもののところへとんでゆく本能がある。これはどうにも制しきれぬ衝動で、僕はたびたびこいつを利用したことがある。たとえばダーリントンの換え玉事件でも役にたったし、アーンスウォース城事件でもそうだった。人妻なら、何はおいても赤ン坊を抱きあげるし、さもなければまず宝石類だ。(「ボヘミアの醜聞」(新潮文庫)より。)

 

今回は青木藍子というアイリーン・アドラーとイニシャルや「あい」が共通している人物が登場すると言うことで、モチーフにした「語られざる事件」も、アイリーンの登場する「ボヘミアの醜聞」から取り上げたということでしょうか。

前回の「語られざる事件」は「六つのナポレオン像」に出てきていますが、あまり本筋とは関係なかったようです。

 

ちなみに公式HPではこのように紹介されています。

『ボヘミアの醜聞』の中で言及されていたもの。ホームズを“唯一出し抜いた女性”として登場するアイリーン・アドラーとの対峙において、彼女がボヘミア王との写真を隠した場所を見つける手段として、ホームズは、ワトソンに発煙筒を投げ込ませて火事だと思わせることで、アイリーンがいち早く飛んで行ったところに写真があると踏んだ。この方法をかつても用いたとホームズが言及した過去の事件の一つとして挙げられているもの。(シャーロック公式HPより)

 

「あの女」

第一話の方でも書いていますが、ホームズにとっての女性と言えばアイリーン・アドラー。

シャーロック・ホームズは彼女のことをいつでも「あの女」とだけいう。ほかの名で呼ぶのを、ついぞ聞いたことがない。彼の視野のなかでは、彼女が女性の全体を覆い隠しているから、女といえば、すぐに彼女を思いだすことにもなるのだ。とはいっても「あの女」すなわちアイリーン・アドラーにたいして彼が恋愛めいた感情をいだいているというのではない。(「ボヘミアの醜聞」(新潮文庫)より)

恋愛対象ではないとワトソンは言っていますが、ロマンス要素の少ないホームズが唯一思い出す女性と言うことで、パスティーシュと呼ばれる二次創作の作品では、ホームズの恋人的な立ち位置で描かれることも多い人物です。

ロバート・ダウニーJrの映画では、峰不二子的な立ち位置で描かれていました。(第3作で再登場するかな?)

職業は弁護士となっています。JSHC月例会さんの指摘通り、これはアイリーン・アドラーの夫、ゴッドフリー・ノートンの職業が弁護士だったことからかもしれません。 

 

 

 

 アイリーン・アドラーはホームズの裏をかくほどの知性の持ち主。そんなところにホームズは尊敬の念を持ったのだと思いますが、「シャーロック」でも、獅子雄がどれほどの関心を見せるのか、にも注目していました。

結果としては、尊敬や畏敬といった感情とは少し違いますが、青木藍子が虫けらをいくら救っても害虫になる、という話をしたのに対して、こんなことを言っています。

「やっぱ面白いなあ、あんた。もっともらしい顔で人を救いたいとか言ってるときよりよっぽど美しい。」

こういうところに美しさを感じるというのがアブノーマルな感じですが、実際のホームズも、

僕の見たうちで最も心をひかれた美人というのは、保険金ほしさに三人の子供を毒殺して、死刑になった女だった。(「四つの署名」(新潮文庫)より)

といっていますので、獅子雄も共通する女性観を持っているのかもしれません。

ホームズが言っている保険金ほしさに身内を殺すというのは、第一話の赤羽汀子にもやや通じる気がしました。

 

最後のシーンで、獅子雄がこんなことを言っているのは、青木藍子の能力を認めているともいえるのかもしれません。

「罪に問われない自信があるのかもな。」

実際に無罪放免になって、再登場するという展開もあり得るかとワクワクします。

 

若宮君が紅茶をぶっかけられたシーン

獅子雄と青木藍子の初対面のシーンで、獅子雄が若宮君の足に紅茶をこぼしてしまうという場面があります。

この瞬間に思い出したのが、「ボヘミアの醜聞」での、ホームズ(変装)とアイリーンの面会場面。面会と言っても、ホームズが仕組んでアイリーンの部屋の中に入り、ワトソンに頼んで発煙筒を投げ入れて偽の火事騒ぎを起こすというものでした。

なぜ火事騒ぎを起こしたのかというと次のような理由から。

「きわめて大切だった。女というものは、自家が火事と知ったとたんに、いちばん大切にしているもののところへとんでゆく本能がある。これはどうにも制しきれぬ衝動で、僕はたびたびこいつを利用したことがある。たとえばダーリントンの換え玉事件でも役にたったし、アーンスウォース城事件でもそうだった。人妻なら、何はおいても赤ン坊を抱きあげるし、さもなければまず宝石類だ。

 そこできょうのあの女だが、家のなかで何よりも大切なものといえば、むろんわれわれのさがし求めている品物以外にあるわけがない。まっさきに、そいつの隠してある場所へかけつけるにきまっている。火事だッという君の声は、いかにも真にせまっていた。そのうえ煙がでたり、人が騒いだりすれば、どんなおちついた女でもあわてるにきまってる。反応は上々だった。写真は、右手のベルのひものすぐうえの羽目板を動かすと、その奥に隠してある。とっさに彼女がそこへいって、半分ばかり出しかけたのを、現にこの眼で認めた。

 

ということで、獅子雄も若宮君に紅茶をかけて、騒ぎが起こる間に青木藍子がどこを見るのか、観察しようとしているんだなと思い、必死で目線をたどったのですが、何を見たのかわかりませんでした。

ネタバレになりますが、実はこの紅茶の方は、アルバイト秘書の河本美沙をおびき出すトリックに使われていて、目線を追ったのは別の瞬間だったと言うことで、見事に裏をかかれてしまいました。

でも、よく見ると獅子雄が車輪をいじっているときにチラチラ見ていたので、これもヒントだったのかもしれません。

 

ダーリントンについて

上の引用でも登場しているダーリントンについて、原作とは関係ないのですが、少し調べてみました。

獅子雄も言うように、確かに初めての鉄道が走った場所とされているようです。

Wikiのストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の項でもこのように書かれています。

ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道(ストックトン・アンド・ダーリントンてつどう、英 S&DR: Stockton and Darlington Railway)は、1825年に開業した世界で最初の蒸気機関車を牽引に使用した公共用鉄道である。

 

青木藍子の机の上に、彼女の写真がおいてあるのですが、それが英国で撮影されたもので、彼女もダーリントンを訪れトルネード号に乗ったと言っています。

この写真、最初見たときにどこかの駅かと思ったのですが、ダーリントン法律事務所のダーリントンの由来とは気がつきませんでした。

机の上の写真で見える駅小壁や天井の作りはダーリントン駅のものと同じように見えますので、実際のダーリントン駅のものを使っているようです。(菅野さんが実際に行って撮影したとも思えないので、菅野さんの部分はあとから合成したのかもしれません。)

こちらがダーリントン駅となります。

DarlingtonRailwayStation.jpg
By The original uploader was Adambro at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., CC BY-SA 2.5, Link

 

法律事務所に飾ってある車輪の模型、名前にLocomotion No1とありますが、これは初めての蒸気機関車の名前です。

一方、青木藍子が「トルネード号に乗ったとき」と言っていますが、このトルネード号は2008年に愛好団体によって新しく作られた蒸気機関車で、現在でもツアーで乗ることができるようです。

是非乗ってみたいですね。行きたいところ、したいことがまた一つ増えてしまいました。

 

 

花婿失踪事件

今回、かなり地味な扱いですが、「ボヘミアの醜聞」以外にも原作にちなんだネタがありました。

それが花婿失踪事件。

この事件、結婚を目前に花婿がいなくなってしまうという事件なのですが、今回の「シャーロック」でも、高橋博美と婚約破棄をした佐々木守という人物が登場します。失踪と破棄ということで、若干違うのですが、注目は登場人物の名前。

花婿に失踪された女性の名前が、メアリー・サザーランドで、婚約を破棄したのが佐々木守。

ということで、いつもの法則で、イニシャルがMSとなります。そしてサザーランドと佐々木で、「サザ」と「ささ」の語感も似ています。

こちらの指摘で気がつきました。

 

制作陣が意識してたんじゃないかとさらに思わせるのが、獅子雄が青木藍子に渡した名刺。

そこには、「エンジェル生命保険 調査員 誉獅子雄」とフェイクの情報が書かれているのですが、失踪した花婿というのがホズマー・エンジェルという名前。さらに下の方の住所を見ると「サザーランドビル5階」とあり、まさにメアリー・サザーランドと一致。

ということで、婚約破棄に絡めて「花婿失踪事件」をうまくちりばめてくれたのだと思います。

 

その他のネタ

若宮の寝違え

今回の若宮君、冒頭からずっと首を押さえて痛がっています。ベッドから落ちて傷めたのかと思いましたが、本人は寝違えたと言っています。

本筋とはまったく関係ないのですが、なぜ出てきたのか。

ちょっと深読みすると、ワトソンの戦争での傷に引っかけているのではないかと思いました。

実はワトソンの古傷については、シャーロッキアンの中では謎とされています。

なぜかというと、傷の場所についてワトソンの言っていることが一定しないんですね。

「緋色の研究」では、

かのマイワンドの大苦戦に参加した。そのさいジェゼール銃弾に肩をやられて、骨をくだかれたうえ、鎖骨下動脈もすこしかすった。(「緋色の研究」(新潮社文庫)より)

 

しかしその後に起こった「四つの署名」では、

脚にジェゼール銃弾の貫通創をうけたので、歩くにはさしつかえなかったが、気候のかわり目ごとにずきずき痛んで悩まされるのである。(「四つの署名」(新潮社文庫)より)

と、肩と脚に負傷を負ったことになっています。

最後に若宮の寝違えも直ってしまいますが、これは肩に受けた傷がなくなってしまったこととかけたのかもしれません。

 

ボイスチェンジャー

冒頭から、獅子雄が女性の声になるボイスチェンジャーを使って、ちょいちょい若宮にちょっかいを出しています。

男性の声が女性にというこの機械。ここで思い出すのが、今回の話の下敷きになっている「ボヘミアの醜聞」のあるシーンです。

ベーカー街に帰りつき、戸口でホームズがポケットの鍵をさぐっているとき、通りすがりに声をかけた者がある。

「シャーロック・ホームズさん、こんばんは」

 通行人は幾人かあったが、言葉をかけたのは、急ぎ足に遠ざかっていったやせ形に長外套を着た青年だったらしい。(「ボヘミアの醜聞」(新潮社文庫)より)

ワトソンは「青年」と形容していますが、実はこの声をかけた人物こそアイリーン・アドラーでした。

「お芝居には慣れておりますし、男装をいたすのなど造作もございません。」

といっているように、性別も変えて演技できるとのこと。

獅子雄も、

「女性に変装する日もくるかもしれないじゃん。」

といっています。

このボイスチェンジャーは、そんな男性に変装したアイリーンを象徴する道具として使われているのではないかと思いました。

 

女嫌い

江藤警部が獅子雄に電話した際に、獅子雄が上のボイスチェンジャーを使って返答すると、江藤が、

「おまえ女嫌いじゃなかったの」

といっています。

どうやら獅子雄は女性が嫌いらしいのですが、ホームズもこんなことを言っています。

しかし恋愛は感情的なものだからね。すべて感情的なものは、何ものにもまして僕の尊重する冷静な理知と相容れない。判断を狂わされると困るから、僕は一生結婚はしないよ。

理知を最重要視するという点については、二人は共通しているようです。

 

食べない

同じく理知を重要視するという点では、最後のシーンで、若宮君がパスタを作ってあげたのに、獅子雄は、

「こんなの食ったら集中力が停止し、睡魔に襲われ脳は思考停止になる。」

と拒否し、パスタは江藤にとられてしまいます。

ホームズは決して食べることが嫌いではなく、第一話の方でも書いたシンプソンズなどのレストランで食事を楽しんでいましたが、いったん事件が始まると、食事を取らないこともありました。

例えば「マザリンの宝石」でこんなことを言っています。

「どうして物を食べないのだい?」

「空腹時のほうが頭が冴えるからさ。ワトスン君も医者だからよくわかっているはずだが、消化のために血液を費せば、それだけ頭脳のほうがお留守になるわけだからね。僕は頭脳そのものだ。ほかの部分は付属物にすぎないのさ。だから頭だけは大切にしなきゃね」(「マザリンの宝石」(新潮文庫)より)

 

その他にも事件に没頭するあまり食事を取らないということはしょっちゅうありました。ただ、こうしたときは食べられるときに食べていたりするので、頭脳を研ぎ澄ますためというよりは、純粋に没頭して忘れていたということかと思われます。

しかし、獅子雄が普段から何も食べないということもなさそうなので、このシーンでは何か機械工作をして集中していたことと、パスタという炭水化物・糖質メインの食事だったから拒否したのかもしれません。

 

手柄を奪われる

こちらも最後のシーンの一コマです。

江藤警部が部屋に表彰されたことを自慢するのに対して、若宮が獅子雄に訪ねています。

『悔しくないの、こんな手柄とられて?」

「別に、俺は事実が知りたかっただけだし。」

 

これ、原作でもたびたび起こってることで、ホームズは自ら手柄を警察に譲ることもしばしば。

「四つの署名」では、自らこのように言っています。

グレグスンやレストレードやアセルニー・ジョーンズなどの手におえなくなると、先生がたはいつもそれなんだが事件は僕のほうへ回ってくるのさ。そこで僕は専門的な見地からデータを精査して、独特の意見を発表する。だがそんなときにも僕はけっして手柄顔はしない。僕の名が新聞にはなばなしく出たこともない。自分独特の力によって事件を解決してゆくという愉快な仕事そのものが、僕にとっては無上の報酬なんだ。(「四つの署名」(新潮文庫)より)

 

具体的には「ボール箱」事件でも次のようなやりとりがあります。

ホームズは名刺の裏に何やら走りがきして、それをレストレードに投げた。
「それが犯人の名ですが、早くても明日の晩までは逮捕できますまい。ただ私としては、解決に困難のともなうときだけ捜査に参加することにしたいですから、この事件に関しては私の名を出さないでほしいです。(「ボール箱」(新潮文庫)より)

 

加えて言うと、真実を探ることができたという満足感が十分な報酬であるという側面もあるのですが、「ノーウッドの建築士」でワトソンが言うように、

しかしながらホームズは、その冷やかな自負心の強い性情から、大衆の喝采に類することが大きらいで、彼の言動、方法、成功などについて私が筆にするのを堅く止めていたのである。

という性格も大きかったものと思われます。

 

いつも思うのは、せっかく警察の手柄にしてあげても、ワトソンがこうして事件簿を発表してしまうと世間に知られることとなり、警察の面目が丸つぶれになったのではないかと言うことです。BBC「Sherlock」では、この辺のきびについてレストレードが嘆いていました。

こんなことを考えると、今後、若宮君の記録がどのように扱われるのかも楽しみです。

 

ガソジン

小ネタですが、ダーリントン法律事務所の本棚の右下に球状のガラスっぽいものがありますが、原作にも登場するガソジンではないかと思いました。

ガソジンというのは炭酸水を作る器具で、ビクトリア時代に実際にあったものです。

ホームズ原作でも登場しています。

彼の態度は、そっけないほど淡々としていた。珍しくもないことだが、それでも私の訪問は喜んでくれたと思う。ろくに口をきかず、しかしやさしい眼つきで、そこの肘掛椅子にかけろと手で示し、葉巻の箱を投げてよこし、部屋の隅のウイスキーやソーダ水のサイフォンのある場所を指さした。(「ボヘミアの醜聞」(新潮文庫)より)

ソーダ水のサイフォンとなっていますが、原文ではgasogeneとなっています。

こちらではガソジンと翻訳されています。

それはそれとして、しばらく寛ろぎたいね。アルコールやってもいいのかい? ガソジンも葉巻も昔と同じところにある。まあ昔よく掛けたひじ掛け椅子に納まってみせてくれたまえ。(「マザリンの宝石」(新潮文庫)より)

Wikiの画像ではこのようなものが示されています。

Seltzogene.jpg
By Sobebunny投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

 

(追記)

若宮の部屋にガソジンと同じ機能を持つ炭酸水製造機、ソーダストリームがあると教えていただきました。

 

若宮君と河本美沙のデート

獅子雄の柵にはめられ、ダーリントン法律事務所のアルバイト、河本美沙とデートをすることになった若宮君。

河本美沙が何か知ってると感づいて、若宮を使って情報を引き出そうと、上に書いた紅茶ぶっかけをやらかしたのですが、この相手の身内から情報を引き出すという方法、「犯人は二人」でホームズが使った技法に似ていると思いました。

「君は僕のことを、結婚したがっているとは思わないだろうね、ワトスン君?」
「思わないとも!」
「その僕に婚約ができたと聞いたら、びっくりするだろうね?」
「えッ! そいつはおめで……」
「相手はミルヴァートン家の女中さ」
「おやおや、なんだってまた……」
「聞きこみがほしかったんだよ」
「それにしても、婚約とはちと深入りしすぎたよ」
「止むをえない措置だったんだ。まず景気のいい鉛管工になったのさ。名まえはエスコットというんだ。毎晩彼女を散歩につれだしてね、のべつおしゃべりをしたものさ。うっふ、ベちゃくちゃ、ベちゃくちゃだ! だがおかげで、知りたかったことはみんなわかった。ミルヴァートンの家のなかは、まるで自分の手のひらをさすほど詳しく知っている」
「だってその娘がかわいそうじゃないか」

 

この件については、ワトソンの言うようにやり過ぎな気もしなくはありませんが、ホームズが婚約と言うことで、シャーロッキアンの中でもこのアガサをアガサ・クリスティーではないかと考えたりといろいろと議論があるところです。その説については、こちらでも取り上げられています。

 

記者の名刺

ところで、上でも書いている名刺ですが、今回、獅子雄が身分を偽るための名刺を複数持っていることがわかりました。

その一枚、高橋博美の兄に面会していたときに使っていたのが、ストランドマガジンの記者というもの。

ストランドマガジンと言えば、ホームズの短編が連載されていた雑誌の名前です。その最初の作品が「ボヘミアの醜聞」でした。

 

さらに言うと、住所となっているのが「ビートン」ビル。こちらは、最初の長編であり最初のホームズ作品でもある「緋色の研究」が掲載された、「ビートンのクリスマス年鑑」からきていると思われます。

 

第三話への期待

獅子雄と若宮の出会いの第一話、「あの女」アイリーン=青木藍子が登場した第二話と、満足できる話が続くと第三話にも期待が募ります。

第三話、公式では次のようなストーリーになるようです。

今回のテーマは、地面師詐欺!巨額不動産を巡り詐欺師との息詰まる騙し合いが展開!そして殺された詐欺師が残したダイイングメッセージを解け!現場に残された長・短・短の3本の枝の謎!終わらないどんでん返し!渋谷の一等地にある空き家で、身元不明の高齢男性の死体が発見された。そこは5年前に巨額の地面師詐欺の舞台になった邸宅。事件後、詐欺被害にあった建設会社の社長がその邸宅内で自殺し、いわく付き物件として空き家のままになっていた。
捜査一課の江藤礼二(佐々木蔵之介)に捜査依頼を受けた誉獅子雄(ディーン・フジオカ)は、その遺体があった場所を検分。すると、遺体の手元に3本の木の枝があることに気づく。江藤は壁にあるリースの枝が落ちただけだと言うが、獅子雄は枝の折れた断面が新しいことを指摘する。その後、死体の身元が5年前の地面師詐欺グループの1人だったことが判明。そこに、捜査二課の市川利枝子(伊藤歩)が現れて…。(シャーロック公式HPより)

シャーロックの予告では、「語られざる事件」として、5つが示されていました。すでに二つの事件は使われていますので、残りは3つ。

「タンカーヴィル・クラブ醜聞事件」、「マーゲートの婦人事件」、「ジェイムズ・フィリモアの失踪事件」の三つとなります。

しかし、いずれの事件も、名称や内容から予告と関係しそうなものが思い当たりません。特に「フィリモア事件」は、バターとパセリに匹敵する、傘を撮りに行ったままいなくなってしまうと言う特徴的なもので、これであれば傘とか失踪というキーワードがあるはず。

「マーゲートの婦人事件」は、「第二の汚点」という事件に出てくるのですが、次のような事件だそうです。

「とはいうものの、女の考えることばっかりはわからないものでねえ。同じ理由から僕が疑惑を抱いた『マーゲートの女』の事件を覚えているだろう? 鼻の頭に白粉をひとはけもつけていない女——結局それが正解だとわかったが……何といっても流砂のうえに家は建てられないじゃないか。女はほんの些末な動きの中に、大きな意味があったり、とんでもないことをやらかすから、調べてみたらヘヤピン一本のためだったり、カール鏝のためだったり、まったくわからないものだよ。(「第二の汚点」(新潮文庫)より)

女性と言えば、市川利枝子という刑事が登場しますが、化粧っぽい話題も出ていません。登場している「第二の汚点」もなくなった極秘文書をさがすというもので、あまりひっかかりません。

トレーラーには老女が登場していますので、こちらがマーゲートの女というのもあるかもしれません。

 

「タンカーヴィル・クラブ醜聞事件」は、「オレンジの種五つ」に登場。

「ご名声は承っています。プレンダーガスト少佐から、タンカーヴィル・クラブの醜聞問題で、あなたがどんなふうにあのかたをお救いくだすったか……」

「ああ、あれですか。少佐はカードでインチキをしたという無実の罪をこうむったのですよ」

「あなたにお願いすれば、どんな難問でも必ず解決してくださると少佐は申しています」

「それは少佐がすこし買いかぶっていますよ」

インチキと詐欺というのは少し関係しそうですが、冤罪要素はなさそうです。

 

シリーズは5話以上あると思いますので、上記とは別の事件である可能性も高いかもしれません。

ということで、まず事件内容を見ると、地面師詐欺事件ということで、土地がらみの詐欺。土地がらみというと原作では真っ先に「ライゲートの大地主」が思いつきます。

この「ライゲートの大地主」事件、土地の権利がらみの争いから派生して、恐喝、殺人などに発展するのですが、詐欺ではありません。

しかし、興味深いのはこの「ライゲートの大地主」事件に登場する「語られざる事件」。

ホームズはこの時期に過労になるまで働いていたのですが、その手がけていた事件というのがこちら。

自分のみごとに解決した事件が、三カ国の警察が手を焼いているものだったと知っても、またヨーロッパきっての名詐欺師を、子供でもあしらうように鼻をあかしたと聞いてさえ、彼の神経の衰弱は救われることがないのだった。(「ライゲートの大地主」(新潮文庫)より)

 

ライゲートの大地主という土地がらみのタイトル、そこに登場する詐欺師の事件ということで、予告の内容とかなり合致すると思いますがいかがでしょうか。

JSHCのUさんも同じことをお考えですので、信憑性が高い?

モーペルテュイ男爵というのは、同じく「ライゲートの大地主」の冒頭で語られています。上の、三カ国の警察が手を焼いた事件との関係はいまいち明らかではないのですが、大陰謀事件というと渋谷土地開発がらみの地面師詐欺とも近いのかも。

かの有名なオランダ領スマトラ会社事件、モーペルトイ男爵の大陰謀事件などは、あまりにも世間の記憶になまなましくはあり、あまりにも政治経済方面に関係がありすぎて、ここにホームズ探偵譚の一つとして物語るには、いささか不適当ではあるけれど、それがホームズを間接に、奇怪にして複雑な事件に引きいれ、ひいては彼が終生の敵として闘っている犯罪に、新しい武器の威力を示す機会をあたえることにはなったのである。(「ライゲートの大地主」(新潮文庫)より)

 

その他に、ダイイングメッセージかもしれない描写が公式のトレーラーにありましたが、木の枝が3本。ダイイングメッセージと言えば、「緋色の研究」のRache=復讐が有名ですが、今回の事件も詐欺事件の復讐ということもありそうな内容。

枝の形を見たときに思ったのが、左の一本が人のような形に見えたこと。そこから連想したのが「踊る人形」事件。ただ、「踊る人形」では、語られざる事件はなかったと思います。

 

その他、シャーロッキアンの北原尚彦さんは、こんな推理を。

 

さてどんな事件なのか楽しみになってきました。

 

Tomo’s Comment 

ということで、第二話についてもいろいろとまとめてみました。

ツイートを引用させていただいた皆様、ありがとうございます。また次回も一緒に盛り上がれたらと思います。

原作ネタで、他にも気づいたよ、っていう方は、@tommasteroflife  あてにつぶやいていただくか、#月9でシャーロック でつぶやいていただけたら、拾わせていただきたく思います。

 

まとめはこちら

新月9ドラマ「シャーロック」第一話をシャーロッキアン的に見てみる

早くも黒幕の影が!新月9ドラマ「シャーロック」第三話もシャーロッキアン的に見てみる

キーワードは失踪でなく橋?月9「シャーロック」第四話をシャーロッキアン的に見てみる

 

【#月9でシャーロック】「マーゲートの婦人事件」がモチーフ。月9「シャーロック」第五話をシャーロッキアン的に見てみる

 

当ブログではホームズについては次のようなカテゴリーであれこれ書いています

「ホームズゆかりの地」案内

ホームズ研究書

ホームズパスティーシュ

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