月9の「シャーロック」が始まり、登場する元ネタを探すことが多くなってきたのですが、そんなときに重宝しているのが今回紹介する「シャーロック・ホームズ大図鑑」です。
発売された3年前には入手していて、見やすい本なのでたまにパラパラと必要なページを見ていたのですが、今回いろいろと調べるにあたり、あちこちに読み応えがあったので、通読してみることにしました。(といっても、作品紹介などは既知なのでとばしとばしですが。)
「大図鑑」の内容
発行元である三省堂のページでは、次のように紹介されていました。
正典60編の詳しい解説・分析に、著者・主要キャラクターや作品の時代背景の解説、映像作品の紹介、関連作の一覧などを付けた、「シャーロック・ホームズ」解説本の決定版!
印象的な台詞や文章の抜粋、図解による分析や事件の状況を説明する絵地図、 映画やテレビ作品からの写真など、オールカラーで楽しく読める工夫が満載!
図鑑というだけあって、オールカラーで図や絵・写真などが充実しています。
目次は次のとおり。
シャーロック・ホームズをめぐる人々
ホームズの初期の冒険
帰ってきたホームズ
ホームズ最後の挨拶
ホームズの冒険は続く
シャーロック・ホームズの世界
ホームズのさまざまな顔
コナン・ドイル以外によるホームズもの
コナン・ドイルによるホームズもの以外の作品
索引/訳者あとがき
出典一覧
メインの内容は、正典に登場するすべての事件の解説なのですが、各事件ごとに、作品紹介として初出や単行本の出版、登場人物が最初にまとめられているのもわかりやすいですし、事件の紹介もあらすじだけではなく、人物や作品の背景まで丁寧に考察されています。
さらに関連する話題についてコラムが追記されていて、こちらも事件や時代の理解に役に立ちます。例えば、四つの署名事件であれば、関連する「インド大反乱」について解説がありますが、それをコナン・ドイルがどう受け止めていたのか考察されていたりとかなり踏み込んだ内容。
写真や絵も、作品に登場する当時のもの(例えば、注射器やタイプライター)がふんだんに使われているのもイメージを持つのに助けとなります。
上記のコラムにも通じますが、事件紹介の中でも、かなり深い解説がついていますので勉強になることも多々ありました。
例えば、演繹法、帰納法とアブダクション(仮説形成)の違いなどは、図解付きで紹介されていたりして理解が進みました。
シャーロック・ホームズの世界
事件解説のパートの後に、シャーロック・ホームズの世界という章があり、当時の「大革新と発展、急激な時代の変化」(P296)について触れられています。
ロンドンの都市化に伴う交通手段の変遷、社会階層、ジェンダーのことなど、簡潔にまとまっているのでわかりやすくなっています。(昔記事にした「ブースの貧困地図」についても出てきていました。)
またこうした一般的な内容のみならず、推理法や犯罪学などについても、当時の進化の様子が解説されているので、ホームズの手法をよりよく理解するのに役に立ちます。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
本書は、ホームズものと言うよりは、大図鑑のシリーズの一つとして、「哲学」、「心理学」、「経済学」の図鑑にシェークスピアとホームズが加わったというもの。
こうした図鑑としてのしっかりとした構成や書き方が活かされていて、非常に分かりやすい、読みやすい一冊になっていると思います。
情報も偏りがなく網羅的になっていますので、ホームズの正典を読んだ後に、あるいは読みながら見るのに最適。
多くの入門書がありますが、お薦めの一冊と言えるでしょう。
最近同じシリーズで、「犯罪学大図鑑」も入手したので、こちらもじっくりと読んでいこうと思っています。
当ブログではホームズについては次のようなカテゴリーであれこれ書いています
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