一年間ロンドンに住んでいたときに、ホームズゆかりの地をともかく回りまくるということをやっていました。
200カ所ぐらいになるでしょうか。
当時は単に出てきたところに行ってみて写真を撮るだけでしたが、その後、もう少しつきつめて、場所を特定してみたり推理してみたりする、いわゆるホームズの地理学に目覚めてしまいました。
その後、タイトルに「ホームズ」と「ロンドン」が入っている本は、洋書・和書問わずに見つけ次第購入してきたのですが、なぜかこの王道ど真ん中の本が抜けていたようです。
改めて購入して読んでみましたが、まさに王道。
ロンドン旅行してホームズのあれこれを巡ってみたいという人はこの一冊があれば、最初のロンドン旅行は大満足できること請け合いです。
案内されている場所
本書で案内されているのは、ロンドンの71カ所と、ロンドン郊外の6カ所の総計77の場所。
ロンドン郊外などは町の名前などおおきなくくりとなっていますが、ロンドン市内については通り名での紹介もありますが、建物や店舗などはピンポイントで記されています。
これら77箇所がホームズとの関係、登場箇所の紹介、関連する歴史的事項などがコンパクトにまとまって解説されています。
私もほとんどいっていると思うのですが、ジェレミー・ブレットさんがホームズの芝居をやっていたウィンダムズ劇場と行こう行こうと思って行けてなかったマリバン図書館(ホームズコレクションは今では移転してしまっていますが)は行けてなく、ロンドン郊外もライギット、イーストボーン、ホーシャムは行ったことがありません。
冒頭にある「ホームズのロンドン地図」が秀逸です。同種の地図はたくさんありますし(例えばこちらで紹介しているものとか)、私もホームズクラブの会誌向けに作ったことがあるのですが、紹介している場所の数、地図の見やすさ等々の観点からもとても良くできた地図となっています。
実際に訪問してみると、きっとホームズの時ってどんなだったんだろうと思いをはせると思うのですが、本書では、場所によってではありますが、ホームズ時代の写真と現代の写真と両方掲載されていますので、その変容ぶりというかむしろあまり変容していないことに感銘を受けるでしょう。
さらにありがたいことに、半日程度でまわれる一連のコースとして近隣の場所をまとめて紹介しているので、この通りに回れればとても効率的。地図もあるし写真もあるので、場所を探すのも簡単だと思います。
ロンドンに持って行けば、紹介されているAからHの8個のコースを回るだけで、一週間程度は充実したロンドンホームズ旅行ができること請け合い。ホームズにばかり時間が割けないという声もあるかもしれませんが、バッキンガム宮殿やセント・ポール寺院などロンドンで一般的に見るべき場所も入っていますし、ビッグベンやタワーブリッジなども途中で見ることができるルートになってますのでご安心を。
そして、その場所が登場するホームズの作品名だけではどんな話だったか思い出せない人のために、親切に事件の簡単な紹介も欄外に記載されている親切ぶり。
誌面の都合もあって、シャーロッキアーナ的な解説については非常に限定的ですが、ホームズの下宿がベーカー街のどこにあったのか、など基本的なことについては紹介されています。
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改めて読むとホームズのロンドン案内としては内容の質、紹介されている場所の量ともに非常に充実した内容となっています。
ホームズ研究は、本当に先人がありとあらゆることをしているので、新機軸を打ち出そうと思ってもなかなか難しいと言うことを改めて実感しています。
私もホームズゆかりの地訪問記を遅々としてこちらのブログにアップしていますが、新しい切り口を示せるのはほんのわずか。これまでの先人の探求も含めてまとめて、せめて何か一つくらい新しい知見を付け加えられるようにしたいと思っています。
ところで、この本が出版されたのが1993年ということで、私が2回目のロンドンに行った年だったと思います。95年にも行っているので、その当時この本を持ってなかったことが残念でなりません。
しかし、考えてみれば93年というともう四半世紀近く前のこと。本書の写真に収められた風景にも多少の変化が出てきていると思いますので、そういう意味でも、この本のヴィクトリア時代、90年代の写真と現在の風景を比較してみると面白そうですね。
古本でしか手に入らないかもしれませんが、ホームズが好きでいつかロンドンに行ってみたいという人は見かけたら是非入手されることをお薦めします。
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