今日の授業の内容は、Cause of Conflict。なぜ戦争が起こるのかというものでした。
授業のためのReadingで、世銀のレポート「Economic Causes of Civil Conflict and Their Implications for Policy」というのを読んだのですが、このレポートによれば、紛争の原因はGrievance(不当な扱いへの不満)よりもGreed(欲)が紛争の原因としては主要であるということを20世紀後半の紛争の原因の分析をとおして述べています。
紛争の原因といえば、一般的には民族の対立や政府の圧政などが思い浮かびますが、より強力な要因は経済的なものにあるというのを実証しようとしているのは面白いと思います。(紛争の話で面白いというのは不適切かな。)特に影響が大きいと言っているのは、主要な輸出産品が80%を超えている場合で、紛争の危険が増大するそうです。逆に民族の多様性がある(支配民族が45%以下の人口比)場合は、多様性故に反乱軍の組織・統制が難しいので、紛争のリスクは少ないということのようです。
ということを背景にレクチャーがありました。レクチャーは上記のような紛争の原因に関するTheoretical modelを見ていくというもの。(ちなみに上記はCollierのGreed vs Grievance Modelとして紹介されました。)このModelを元に、どのように政策に反映させていくのかというところまで学ぶのが目的です。
89年以降、500万人の市民の命が奪われ、5000万人が難民化しています。これらの近年の紛争の特徴としては貧困国、とくにアフリカで死亡率が多い、かつて軍人と市民の死亡の率は8:1だったのが、近年では1:8に逆転している、といったことだそうです。
Mary Kladorが「New & Old War」の中で、戦争の目的、軍隊のタイプ・技術、経済、政治について17,18世紀、19世紀、20世紀前半、21世紀後半とで特徴を比較しており、概して古い戦争はIdeologicalなものであったとしています。これに対して、新しい戦争は、geo-political, ideologicalな古い戦争の目的に対して、ある特定のidentity(派閥、宗教、言語)に基づいたidentity politicsが原因で、他のIdentityを持った集団を排除することを目的としている。それにより難民が増えているという分析です。
New And Old Wars: Organized Violence in a Global Era
- 作者: Mary Kaldor
- 出版社/メーカー: Polity Pr
- 発売日: 2006/11/30
- メディア: ペーパーバック
Ethnic Conflictは、対立する民族がその置かれた立場を変えるために起こす紛争ですが、原生的(過去の敵対関係や憎悪)な原因なのか、エリートによってManufacture・Mobilizeされたのか二つの説があるそうです。
90年代になると、紛争の経済的な分析がでてきました。この見方によれば、紛争の主要な原因はMaterial interestであって、ideologicalなものではない、原生的な民族感情によるものでもないと言っています。
その代表的なものが、冒頭で取り上げたCollierによるもので、この分析は47の紛争をとりあげ、統計と理論で分析をしたというもの。これによると、戦争のリスクを見るIndicatorとして11の要因を挙げていますが、最も主要なものはPrimary commodity exportがGDPの26%を超えると紛争のリスクが高まるということです。彼の主張は、紛争は危険だけど、紛争を起こすことによって得られる経済的利益がリスクを上回ったときに紛争という手段が選ばれるということで、つまり紛争はjusticeやgrievanceよりもloot, greedを原因にしているというものです。
これにたいしてCramerは、政治と経済は不可分であるということで、Political Econoy Modelを作り、rational choiceによって紛争が起こることを否定しています。彼はGreedとGrievanceは共存しているとも主張。かれのモデルでは、紛争の原因はPolitical economyに内在し、国内の政治的闘争があり、国際資本とのリンケージ抜きには分析できないとしています。
Stewartのモデルでは、Cultural DimensionとEconomic Factorsから分析をしています。Cultural dimensionとしては、文化的な自立を求めて戦うグループがあり、歴史的な民族の欲求は御しがたく、故にEthnic identityは 作られたものであるということがあげられています。またEconomic Factorsとしては、集団(文化、宗教、地理的、階級的)としての動機、個人の動機、政府と人々とのSocial Contractの崩壊、環境の低下による貧困、等の要因を挙げています。
上記のモデルはどれも完全ではないが、いずれも過去の紛争が重要なリスクファクターであるとしている点では一致しています。
では、こうれらをふまえて、どのような政策的なオプションがあるかというと、紛争予防のためには、grievanceに注意を向け、不平等を是正し、政治的権利を増大し、多様性をうまくFacilitateし、経済政策をしっかしり、マイノリティの権利に注意し、平和な状態を作り出すことがあり、紛争後については、非武装化、Diasporaを取り込み、富を再配分し、広い範囲で復興を行い、長期的視野を持ち、支援をするということがあります。
これらのレクチャーを元に、ディスカッションではアフガニスタンの紛争について、その原因を分析するというものでした。アフガンからの留学生もいたり、MSFの医師としてアフガンのクリニックにいた人もいたりして、かなり活発な議論が行われました。Collierのリスクインディケーターを使いながら見ていったのですが、最終的には国際政治の流れの中で、諸外国(ソ連や米国)の介入という要素の方が、より直接的な原因になっているのではないかという結論になりました。これをグループのメンバー2人がまとめることになりました。私がまとめるのは来週の分になりそう。
Tomoさん、
こんにちは。
はじめまして。
記事を非常に楽しく、目を開く様子で拝読致しました。
ありがとうございます。
ひとつ質問をさせて下さい。
Collier氏の主張する、戦争リスクをはかる11のindicatorについて、お教え下さいませんか。
どうぞよろしくお願い致します。
ありがとうございます
>chistocinさん、こんばんは。初めまして。コメントありがとうございます。
ノートでは、Collier氏の言う11のインディケーターは、income per capita, geography, economic opportunities, militarization, active regional conflicts, youth unemployment, history of conflict, diaspora, ethnic dominance, regime instability, primary commodity exportsだったと思います。(オリジナルの教材にあたらないと正確ではないのですが。就学率とかもあったようにも思えます。)