
先日、屋根裏部屋で発見したパンフレットに掲載されていたというホームズ作品について紹介しました。
いろいろと考察記事を読んで本物なのか誰かが書いたのか考えてきましたが、本物かもしれないと思っていた根拠がなくなりつつあります。
ドイルが書いたものではないと結論づけたシャーロッキアンのMattias Boströmさんにいろいろと教えてもらいました。
ドイルのマコーリー好きについて
作品の中でホームズはマコーリーが好で全集を持っていると言っていて詩の引用までしています。実はドイルもマコーリーが好きということもあり、ドイルがマコーリー好きであることを知らない人がこの作品でマコーリーについて書くというのはあまりにも偶然すぎると思いました。
シャーロッキアンの先輩、みっちょんさんに教えてもらったところでは、ドイルがマコーリーについて言及しているのは、彼の自伝の中でと随筆集Through the Magic Doorの中でとのことで、これはこの作品が書かれた1903年よりもだいぶ後に出版されたのだそうです。
ということはもしかしたらドイルのマコーリー好きは当時知られていなかったのかもと思ったのです。
しかし、Mattiasさんによれば、すでにドイルは1896年に雑誌「Great Thoughts」の中でマコーリーに言及していたとのこと。またその他のインタビューやスピーチでも言及していただろうとのこと。
また当時マコーリーは最も有名な歴史家だったことから、偶然登場したということもあり得るのではないかとのこと。
Lay of Horatiusからの引用について
作品の中で、ホームズはワトソン博士がセルカークに行き破損した橋の復興のための資金集めのバザーに参加すること、そこでスピーチをすることを推理して言い当てています。
そしてホームズは橋の復興ということであれば、Lay of Horatiusの一編を引用することを薦めています。(ワトソン博士も使おうと思っていたようです。)
今回この作品が話題になったのは、単にホームズ作品が書かれていたと言うだけではなく、掲載された冊子(橋の復興の資金集めのために販売されました)が発売されたその日にドイルが資金集めのバザーの開会の挨拶をしたということがあります。
従って、もしドイルが作品中でホームズが薦めていたように、Lay of Horatiusからの引用でオープニングスピーチを締めくくっていたら、これは本人以外には事前に知り得なかった情報なので、本人が書いた可能性が高まるのではないかと思いました。
自分自身でも当時の新聞記事が調べられないか試してみましたが残念ながら見つけられず。Mattiasさんに確認したところ、当時の新聞にはオープニングの様子も詳しくレポートされていて、その中ではLay of Horatiusがスピーチに使われたことはなさそうだとのことでした。
Tomo’s Comment
この作品がドイルの書いたものだったら楽しいなと思いながらいろいろと考察をしてみましたが、どうやらその可能性はとても低そうだという結論になってしまいました。
今回いろいろと情報を教えてくれたMattias Boströmさんはアメリカの伝統あるシャーロッキアン団体であるBaker Street Irregularsの会員で、「Sherlock Holmes and Conan Doyle in the Newspapers」という本も共著で出している方です。
今回もセルカークのローカル紙であるThe Southern Reporter紙からの引用も使って反論記事を書いていましたが、こういう研究をされていたのですね。
ちなみに、このThe Southern Reporterという新聞は現在も刊行されています。
こちらのサイトで当時の記事のアーカイブが読めるかと思ったのですが、残念ながらネットでは読めないようです。しかしMattiasさんは当時の記事を持っていたのですね。そのおかげでドイルの実際のスピーチについても分かったようです。
私自身今回感じたのは、ドイルについてほとんど知らないと言うこと。ホームジアンとしてのスタンスとして、ホームズ作品はすべてワトソン博士が書いたもので、コナン・ドイルはその出版代理人にすぎない、ということにしているからです。
しかし今回のような考察をするにはやはりドイルのことも知らないといけないし、当時の政治のことなんかも知らないといけないんだなと思いました。
とりあえずこちらの本を購入したので、ここから始めてみようと思います。
The Soun Reporter
NHKBSのザ・プロファイラー 「コナン・ドイル 名探偵ホームズを生んだ挑戦人生」
の中で出演者の河村幹夫さんがドイルの生涯から次の三つをプロフィールの鍵として
いました。
「北極での冒険日記
ホームズの死
戦場での記念写真(ボーア戦争)」
おそらく、もっと詳しく語りたかったのでしょうが、50分では「鍵」を三つしか
示せなかったと思いました。
河村さんがドイルについて
「目の前のものに挑み続け、まっすぐに自分の生き方を追求した」と言っていたのが
印象的でした。
「名探偵ホームズとドイル」も読むと、本当かしら、、と思うくらいドイルの冒険と
いうかチャレンジが記されていますが、これが本当なんですよね。
自伝を「わが思い出と冒険」としたのが納得できます。
>みっちょんさま
ザ・プロファイラー、見逃してしまいましたが、面白そうな会だったんですね。ホームズとドイル、読むのが楽しみになってきました。