ワインブームが始まる遙か前からワインを探求し、ドイツワインコンクール入賞、「アカデミー・デュ・ヴァン東京校創設役員となるなど、日本のワインの先駆け的な存在である藤見利孝さんの本です。
書かれたのは2001年。そのころすでにワインブームまっさかりだったと思いますが、当時のワインブームとそこで懸想されていた常識に疑義を挟む意欲的な本だったのではないかと思います。
気軽にワインに向き合おう
ワインの常識として流布している諸説を明快に切ってくれているのは、痛快でもあります。
まず、ワインの90%は熟成を前提としない、すぐ飲むワインであり、そうしたワインについてあれこれ言うことはあまり意味がない、とのこと。ワインは熟成させた高価なものを飲むという高尚な世界だけではない、むしろ日常なものが大部分、ということを認識させてくれます。
テイスティングも、ワインを口に含み、空気を混ぜてずるずるするというのは、ワインのテイスターのやり方であり、普通の人がレストランでずるずるやるのは逆に滑稽だとか、ワインの味の表現もボキャブラリー偏重で分かりにくいことこの上ないとか、ソムリエが客に奉仕することをないがしろにしているケースが多く、本末転倒なこと、等々、もやもやしていたことをズバリ言ってくれています。
また、日本ではワインが小売りでもレストランでも割高すぎる値付けがされていることも、欧米との比較で指摘しています。確かに、店で買えば1000円くらいのワインがレストランでは2800円くらいの値付けがされているケースによく出会います。水商売とはいえ、これでは家で飲んだ方が得だと思ってしまいます。
その他にも、ワインは開けたらすぐ飲まなくてはいけないとか、温度は室温でとか、といったワインで言われるいろいろな常識を実験で検証し、それほど気を遣わなくてよいということを証明してくれます。
安価なワインであれば、開けてすぐよりも一日たったくらいの方がおいしく飲めるものもあるということは、いつか実際に実験してみたくなりました。
前半では、こうしたワイン通というか、ワインマニアの諸説を切ってくれていますが、後半はワインや晩餐会の歴史、食べ合わせについての解説が続きます。興味深くはありますが、前半のインパクトに比べると一般的すぎるきらいはありますが、これはこれでワインの歴史をたどる意味では興味深く読めました。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
私の場合、高いワインを飲む機会も少なく、日常ワイン専門とも言えますので、日常に高級ワインの世界や価値観を持ち込む必要がないことがよく分かったという意味では読んでよかったと思います。
一方で、「神の雫」の愛読者としては、少し高いビンテージワインもいつか試してみたいという気持ちも強くなってしまいました。
気軽にワインを楽しみたいという人には、後押しになる本だと思います。
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私は気軽派です。若いワインも好きだし、ワインの銘柄などは覚えられないので、お店ではお料理に会ったものを一皿ごとにオススメで出してもらうようにしています。とはいえ、あまりに知らなすぎるのもな、と思っていました。常識として私が知っておきたかった事が載ってそうな本のようです。読んでみます(^^)。あ、深夜特急も買わなきゃ(^^;)。
usagiさん、ワイン覚えられないのは一緒です。イタリアワインならまだしも、フランスになるとほぼお手上げです。読み物としては面白いと思いますが、ワイン本たくさん出てますので、選びがいがあると思います。この本は知識を得ると言うより、間違った常識を切るないようですので、結論はそんなに気にする必要ないということのようです。深夜特急は単行本と文庫版とありますので、お好きな方を是非。