【ホームズ】漱石が描くホームズの姿とは?「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」

漱石と倫敦ミイラ殺人事件

夏目漱石が英国ロンドンにに留学していた時期は、ホームズがロンドンで活躍していた時期と重なっています。さらに、漱石がシェークスピアのことを学んだ先生はベーカー街のすぐ隣の通りに住んでいました。

そんな背景から、漱石がホームズと出会っていたのでは、という想像が膨らんでしまうのですが、まさにそんな想像をを小説にしたのがこちらの作品。

 

 

漱石が見たホームズ

Amazonによる内容紹介は次の通り。

英国に留学中の夏目漱石は、夜毎、亡霊の声に悩まされ、思い余って、シャーロック・ホームズの許を訪ねた。そして、ホームズが抱える難事件の解決に一役買うことになる。それは、恐ろしい呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになってしまったという奇怪な事件であった!年少の読者にも読みやすい「総ルビ版」で贈る、第12回日本ミステリー文学大賞受賞記録企画。

 

この作品は、夏目漱石の一人称とワトスン博士の一人称とが交互に登場しながら事件が進んでいきます。

従って、事件そのものもトリックが凝っていておもしろいのですが、それ以上に面白いのが漱石が見たホームズとワトスン博士が描くホームズとで人物描写がまったく違っていること。

 

漱石の描くホームズは、原理主義的なホームズファンには受け入れられないかもしれない、やや壊れ気味のキャラクター。

一方で、ワトスン博士の描くホームズは正典に描かれるのと同じホームズ。

なぜこのような矛盾が起こっているのかは、最後まで解消されないまま残ってしまうのが私としては残念に思いました。

漱石は倫敦でかなり鬱になっていたようなので、そのためにこうした表現になったのか、著者がホームズの実像がこうだと思っていたのか、最後に決着をつけてもらっても良さそうなものです。

 

Tomo’s Comment 

トリックについては、途中で読めたような気がして、もう少し奇想天外さがあってもよかったかも。

私的には、二人が描くどちらが本物のホームズかという謎が事件以上に注目すべき謎でしたが、それが解消されないのでややもやっとした読後感です。

読者に委ねるということなのか、漱石の描くホームズが正しいと言うことを受け入れるべきなのか、判然としません。

ストーリー自体は楽しめたのですが、本編以上に、巻末に収められた島田さんがどうやって小説家になったのかという特別エッセイも感じ入るところがあり秀逸でした。

 

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