
私にとっての第一次ホーメジアン(シャーロッキアンのことです)時代に購入した本を読み返してみました。
第一次ホーメジアン時代というのは、ホームズ作品60編を読み終わって、小林・東山著の一連のホームズ研究書を読んで、ホームズ研究に目覚めた時期。中学〜大学生ぐらいにあたりますでしょうか。(ホームズに触れたのは小学校で全部読み終えたのは中学に入ってからだったかな。)
この頃は、研究書を読むのと並行してパスティーシュも読み始めていました。
ホームズやワトソンを揶揄したようなパロディ作品はあまり好きではなかったのですが、60作品の正典の世界観を継承し、さらに正典との整合性もうまくつけているようなパスティーシュが好みでした。(今はもう少し広めのものも楽しめるようになってきましたが。)
この作品はパスティーシュよりではありますが、原作の世界観継承はしていないので、パロディとの中間なのかもしれません。
いろいろなパスティーシュ
パスティーシュの王道は、原作同様のスタイルで、ホームズとワトソン博士が事件を解いていくというもの。
気に入っているシリーズがこちら。
ジューン・トムスン女史によるホームズ愛にあふれるシリーズ。二人の友情の描写が好きです。
最近ではホームズクラブの北原さんの作品。
ホームズと同時代の有名人とホームズを絡ませるというのも多いですね。
人気なのは切り裂きジャック。ホームズがジャックと対決する話は無数にあります。その他、フーディーニ、フロイト、日本人でも夏目漱石、伊藤博文など。
ホームズに登場する人々を主人公にしたパスティーシュも結構ありますね。
有名どころで言えば、モリアーティ教授を主人こうした作品も複数あります。
古めのところでは、ガードナーのシリーズ。
最近ではホロヴィッツの話題作。
そして私も好きなこちらのシリーズも。
未読なのですがアイリーン・アドラーが主人公のシリーズも。
レストレード警部が主人公のパスティーシュ
いずれこれらの作品についてもレビューしたいと思いますが、今回紹介するのはレストレード警部を主人公にしたこちら。
アマゾンによる内容紹介はこちら。
戴冠式を目前にひかえた1902年、国会議員が連続して殺された。さらに、捜査を任されたロンドン警視庁のレストレード警部をあざ笑うように次次と議員が殺されていく。そして、事件を追う彼の前に、死んだはずの名探偵シャーロックホームズの姿が…。ワトソン博士、ホームズの兄、従弟も登場し、事件は意外な方向に―。20世紀初頭のロンドンを舞台にレストレード警部の活躍。
熱心なシャーロキアンというか、ホームズ好きとは対極の視点で書かれており、主人公は有能な警部であるレストレード、脇役にホームズ(本書の舞台はライヘンバッハ後なのでホームズは死んでいる扱い)、ワトソン、マイクロフト・ホームズなどが配されています。
しかも、ホームズ、ワトソンとも正典の記述はすべて作り話で、レストレードは有能な警部、ホームズは妄想癖のあるコカイン中毒者、ワトソンも愚鈍な人物として登場しますので、ホーメジアンとしては受け入れがたいところ。
ただし、著者もアンチホームズ的な描き方はしているものの、正典をかなり読み込んでいて、きちんと矛盾無く取り込んでいるあたりは、熱心なホームズ読者であることは間違いないと思われます。
こうした人物・舞台設定にはホームジアンからの賛否両論あると思いますが、国会議員連続殺人事件をレストレードが追うストーリーは緻密かつダイナミックに進められますので、読み進むうちに次の展開が楽しみになります。
また時代背景や歴史的人物をさりげなく登場させて、ビクトリア女王崩御後のロンドンの雰囲気はよく出ていると思いました。
文体は、オリジナルのホームズとは違い、ちょっとハードボイルド風です。原作とは雰囲気が違いますが、これはこれで新鮮ですかね。あまりホームズにこだわらず、純粋にストーリーを愉しむという意味ではよい作品なんだろうと思います。
M・J・トローによるレストレード警部シリーズ
実はこちらの作品、トローによるレストレード警部を主人公にしたシリーズの3作目。
この前のシリーズ1作目、2作目は日本語訳もされています。
この3冊ですべてかと思いきや、調べてみると全部で17冊の一大シリーズ。残念ながら邦訳されているのは3冊のみのようです。
英語のタイトルを並べると、
- The Adventures of Inspector Lestrade[5]
- Brigade: Further Adventures of Inspector Lestrade
- Lestrade and the Hallowed House
- Lestrade and the Leviathan
- Lestrade and the Brother of Death
- Lestrade and the Ripper
- Lestrade and the Deadly Game[6]
- Lestrade and the Guardian Angel
- Lestrade and the Gift of the Prince
- Lestrade and the Magpie
- Lestrade and the Dead Man’s Hand
- Lestrade and the Sign of Nine
- Lestrade and the Sawdust Ring
- Lestrade and the Mirror of Murder[7]
- Lestrade and the Kiss of Horus
- Lestrade and the Devil’s Own
- Lestrade and the Giant Rat of Sumatra
となります。
上述のトムスン女史のシリーズでも短編集、長編、伝記を含めても8冊なので、相当なものですね。
これだけかけると言うことは、相当ホームズが好きな人なんだろうと想像してしまいます。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
後書きを読むと、4作目のLestrade and the Leviathanも新潮文庫で邦訳の計画があったようです。
その後出ていないと思われますが、残念ですね。
読まなければいけない本が積み上がっている中、このシリーズを英文でまで読んでみることはしばらくなさそう。
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