昔から本が好きで、本屋さんとか古本屋さんになることに密かに憧れていました。
しかし、新卒の時に書店に就職するには至らず、その後もなんとなく本屋さんいいなあと思っていた程度です。(ここでいう本屋さんはどちらかというと小さな古書店のイメージでした。)
そんなだったので、どうやったら本屋さんになれるのかすら調べたりもしていなかったのですが、偶然手に取ったこちらの本にそんな本屋さんのなり方が書かれていて大変興味深く読んだ次第です。
本屋を開業したプロセスがよく分かる
これだけ本があふれている現代なので、きっと探したら本屋の開業に関する本はたくさんあるのだと思います。(実際、この本の巻末にも参考図書が列記されていました。)
本屋を開いてしまって本も書くくらいな野で、おそらくそれらの本の著者は本が好きで本屋を開いた人なのだろうと想像します。
しかし、本書の著者は、本屋が子供の頃からの夢だった訳ではなく、実家にもたくさん本があったわけでもなかったとのこと。
夢でもないにもかかわらず、退職後の仕事として「なぜ本屋を選んだのか」という質問もよく受ける。正直、自分自身もよく分からない。多くの人を納得させられる答えを持ち合わせていない。(P56)
ということで、なんで本屋になったのかではなくどうやって本屋になったのかを書こうと思ったそうです。
本屋を開く
記者時代にも本屋さんを取材して記事にしたこともあったようですが、開業を目指してからも多くの書店を訪ねて、あれこれ質問などもしたそうです。
また、起業塾にも通って事業計画を作ったりもしたそうです。計画では新刊・既刊の売り上げを月93万7500円に設定していて、これは1500円の本を月625冊売らなければならない数字でしたが、その後実際開業した後、500冊を超えた月はあっても600冊売った月はなかったとのことで、計画というのはそのままうまくいく物ではないと言うことが分かります。
店に並べる本の選び方、選書の考え方もいろいろと変遷があったようです。大本のところで新刊本と古本とがありますが、古本は値付けが難しいので新刊本にしたそうです。
確かに、ありとあらゆる本とは言いませんが、一定のジャンルの本だけ考えても、古本の相場を抑えるのはかなりの経験が必要になりそうです。
私もよく古本屋に行きますが、やっとシャーロック・ホームズ関連の代表的な古本の値段が高いか安いかがなんとなく分かるようになってきたぐらいなので、これがミステリーに広がり、小説に広がると途方もない知識と経験が必要とされるであろうことは容易に想像できます。
また、どこの本屋でも買える話題の本も置かないことに決めたそうです。自分が気になる本や読みたい本を選んでいるとのこと。
そして実際の本屋を開く場所についても経緯が書かれていました。物件の探し方、偶然も重なって出会った経緯や、内装をどのようにやったのかなども詳細に書かれています。こればかりは一定のノウハウというよりは出会いの運にもよるので、なかなか同じように進めるのは難しそうでした。
開業後のこと
本屋を開業してからは、トークイベントなどを多数開催したそうです。私自身あまりトークイベントに行く機会がないのですが、本屋で著者の話を聞けるというのはなかなか楽しそうではあります。(石田衣良さんのトークではないのですが、サイン会にいってお話しできたのは、著者の人柄の一端に触れられて貴重な機会でした。)
また新聞記者として鍛えたライティングについて自ら教える講座も開いたりしているそうです。
また、イベント以外の要素としては、飲食も提供しているそうですが、ここにも試行錯誤があったようで、お菓子や軽食は手が回らないのでドリンクだけにしたそうです。
一番気になるお金の話も最後の方で書かれています。
本屋をやりたい?
とても詳しい著者の本屋開業のプロセスを追体験してみて、本屋を現実が少し分かった気がします。もちろん、この一冊だけで分かるものでもないかもしれませんが、とても詳細な一つの具体例と言うことでリアルな状況が少しだけ分かったような気がします。
自分の好きな本、読みたい本をそろえて、おしゃれな店内の本棚に並べて、それを買ってくれるお客さんと会話をする、たまにイベントを開催して人が集まる、といったことを想像すると楽しそうだろうなとは思います。一方で、紙の本が売れなくなってきていたり、景気も横ばいだったり、さらにコロナで人々が外出しなくなってきたりという状況を考えると、本屋で食べていくのは大変だろうと言うことも想像できました。
それでもこの本を読んで本屋をやってみたいという気持ちがなくなるという感じでもないので、やってみたいという気持ちは残ってるんだと思います。
一番気になったのは、著者が手間がかかりすぎるので諦め食の部分。飲食や調理が好きなので喫茶店をやりたい気持ちはより強いのですが、本屋をやりながらワンオペだとかなり大変だということが分かりました。
もう少し本屋さんの本を読んで研究してみようと思います。
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ということで、自分の知らない一つの職業として、そして定年後の仕事の選択肢の可能性としてという観点から興味深く読むことができました。
ちょっとどきっとしたのは、本屋さん側の視点というのも結構本音で書かれていて、本を眺めて買わないで帰るとやっぱり店側はいやな思いをしているんだなということは改めて思いました。
若い頃は休日になると本屋に行って興味があるジャンルごとに買い物かごにばんばん放り込んで買っていたのですが、本を置く場所もなくなってくると紙で買う本についてはかなり厳選するようになってきてしまいました。
そして、今では読みたい本のリストはたまっているので、そうした本は順次大手の本屋で購入しています。(どうしても見つからないときはAmazonで)
そうすると、本屋さん、特に小さい本屋さんに行く楽しみは、見たこともない本との偶然の出会いを求めているところが大きいと思います。
なので、買わないで出ることも多々あるんですよね。でも、背表紙だけだと買うか買わないか判断がつかないし、せめて手に取って装丁や帯(があれば)に書かれていること、目次や文体なども見ないと決心できません。残念ながら、買いたい本に出会えずに本屋を出ることも多々あるのですが、本屋の主人にいやな思いをさせていると思うと心苦しく思ってしまいます。
まあ、かといって入らなければ買うこともないので、これからもピンときた本屋さんには入ってみてじっくりと並んでいる本を見ると言うことはやめないようにしたいと思います。
そうそう、今の家を作る際にお世話になった方が最近本に関わる仕事に華麗なる転職を遂げたと言うことで、そんなときにこの本に出会えたのもシンクロニシティなのかもしれません。
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