【#月9でシャーロック】「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」を予告と相関図から考察する

バスカヴィル家の犬

昨年半ば頃から公開が明らかになった月9シャーロックの劇場版ですが、いよいよ今年6月公開と言うことで、

「盛り上がってきたな。」(若宮)

(「それ毎回言わなくていい。」(グレ))

 

映像やキャストなども徐々に公開されてきて、これからシャーロッキアン達がざわざわとしそうな予感。(というかすでに一人でざわざわしていますが。)

まだ断片的な情報しかありませんが、いろいろと考察してみたいと思います。

 

こちらが公式サイト。

 

「はじまり」か「最恐」か

まずは公開されているこちらの映像からご覧ください。

動画内で語られていることとしては、

「すべてのミステリーはここからはじまった。」

「シャーロック・ホームズ史上、最恐の金字塔」

「120年の時を経て、日本初映画化」

「部下の推理は0点だ」(獅)、「え、なんで」(若)

「魔犬は実在するか、伝説か」

「人間が流すのは、血か涙か」

「うぉー」(獅?)

「その謎解きを、後悔する」

といった内容となります。

 

「すべてのミステリーはここから始まった」というのは、原作の「バスカヴィル家の犬」のことを言っているのだとするとややオーバーな気もします。

ミステリーの始まりだと、エドガー・アラン・ポーなどもありますし、一連のホームズ作品の始まりの区切りとしても、「緋色の研究」もしくは短編の最初の「ボヘミアの醜聞」あたりが始まりな気がします。

あるいは本作独自の別の意味があるのかもしれません。

 

「ホームズ史上最恐の金字塔」というのは、この映画作品が(ホームズ映画史上)最恐、ということであれば特に違和感はありません。原作の中でも「バスカヴィル家の犬」を最高の作品とする意見も多いので金字塔という点では納得感はあります。

ただ、「最恐」かという点では、異論もあるかもしれません。個人的には原作の中では怖さでいうと物理的には「まだらの紐」とか精神的には「ぶな屋敷」などに怖いイメージがあります。BBCシャーロックのバスカ回はかなり恐怖のイメージはありました。

 

映画化について

「120年を経て日本初映画化」というのは、ワトソン博士が事件をストランドマガジンで発表したのが1901年ですので、ここから120年ということなのでしょう。

日本「初映画化」なのかという点、バスカの古い映画があったことをを読んだ気がして調べようと思っていた矢先、JSHCの月例会でも話題になり、初ではないのではとの結論に。

まずは私も持っているホームズクラブ(JSHC)の大先輩のこちらの本に書かれていました。

こちらの本の中では、後藤藤五郎『探偵映画往来」(『新映画』収載昭和八年)からということで以下が引用されていました。

我國でも畑本秋一郎脚色、村田實監督で作られた『猛犬の秘密』水島亮太郎の主演。

同書のこの部分に付された註によれば、これまたJSHCの先輩会員の研究によって、公開されたのは大正十三年三月であることが判明しているとのこと。残念ながら、こちらの研究結果が収録されたJSHCの会誌である「ホームズの世界」は、私が会員になるかなり前の号だったため、手元になく参照できないのが残念です。バックナンバーもかなりいただいたりしてそろっているのですが、たまたま当該の21号がありませんでした。

 

さらに、東京創元社の「バスカヴィル家の犬」の解説にもこのことが書かれているということで確認してみたところ確かにこちらの記載がありました。

そして驚いたことに、五番目の映画化はなんと日本だという。「猛犬の秘密」と題し、一九二四年、日活の京都撮影所で、村田実・監督、畑本秋一・脚本、沢村春子、水島亮太郎・主演で撮られたというが、これはフィルム・センターにもないようで、実物に接するのは難しいようだ。

 

ということで、ホームズの「バスカヴィル家の犬」の日本での初映画化であるかというと文字通りにはそうではない、ということになってしまいますが、何かしらの新要素があっての「初」という意味なのかもしれません。

 

いつ発生した事件なのか

正典と呼ばれるホームズの原作の事件そのものがいつ発生したのかを探ることをホームズの「年代学」などと言ったりします。

ホームズの年代学の場合、ワトソン博士の手記の内容からいつ起こった事件なのかということが考察されていて、事件発生の年月日が明確に書かれている作品もありますし、まったく書かれていないものもあってその場合は書かれていることをヒントに推理していくことになります。明確に書かれている場合でも、ワトソン博士が何らかの事情で情報を隠したい場合はわざと違う日時を書いたりしていることもあり特定も容易ではありません。ただ、前提としては世間に発表される前に起こったことなっています。

本家正典の「バスカヴィル家の犬」は、ストランド誌に発表されたのが1901年8月から1902年4月となりますので、諸説あるのですが、いずれもそれ以前の年代に起こったというものとなっています。

そして、ホームズとワトソン博士が出会ったのは、あまり諸説はなく1881年となっていますので、最も大枠としては1881年から1902年の間に発生したということになります。

細かく正典のバスカの年代学を考察し始めると横道にそれて帰ってこれなくなりますのでこの辺にしておきます。

 

この年代学の考えを応用すると、今回公開される獅子雄版の「バスカヴィル家の犬」事件が発生したタイミングは、本来であれば映画が公開される2022年6月以前のこととなるべきなのですが、月9シャーロックについては一筋縄ではいきません。

 

まず、獅子雄と若宮の出会いとなった「赤羽家の恐ろしい事件」(と勝手に呼ばせていただきます)の発端となる赤羽医師の死亡は2019年10月1日と警備室の監視カメラ映像に映り込んでいます。

従って、本作もそれ以降に発生した事件ということになります。

その後獅子雄が姿を消した「獅子雄が消息をたってしまったアリシア号事件」(と勝手に命名)が発生したのは、若宮のパソコン画面で、「獅子雄は消えた・・・」を書き込んでいる(正確には音声入力している)画面を見ると2019年12月16日となっています。

そして、特別編で3年後の再会のシーンが描かれますが、最後のシーンで若宮が「2022年12月24日、この男はなにごともなかったかのように、再び僕の目の前に現れた。」と言ってるので、再会は2022年、つまり今年の12月という未来の出来事が描かれていることになります。

 

順当に考えると、再会した後の事件ということになると思いますが、その場合、2022年12月以降の話となりますので、未来の話を描くと言うことになりますので、ちょっと気持ち悪い感じ。(すでに再会シーンが未来だったので今更ではありますが・・・。)

あるいは、可能性は少なそうですが、出会ってから失踪するまでの間におこったことで、語られてなかっただけという可能性も排除できません。本編では語られなかった事件が今回語られるというアントールドストーリーである可能性ですね。

 

私個人としては、そもそも実際にヴィクトリア時代にホームズ読者が味わったような喪失期間を経てから復活するということでよかったと思っているのですが、残念ながら特別編で再会シーンが描かれてしまっていてたのは私にとってはやや不満。

待たされた末に、実際の2022年12月に復活に合わせてシーズン2が開始されるというのが理想でした。

その間に3年の時間があるので、映画で失踪前の事件として「バスカヴィル家の犬」をモチーフとした作品を作ってくれたらありがたいとも思っていました。

今回ある意味、望んでいた展開ではあるのですが、22年12月以降のことを描いた映画がそれ以前に公開されるということになるとそれはそれで若干もやもやした思いはあります。

 

正典の場合は、ホームズが消えた「最後の事件」も、復活した「空き家の冒険」も、発表されたのは実際の事件のかなり後となっています。また、ホームズとワトソンが出会ってから「最後の事件」までかなり長い期間でしたので、「最後の事件」発表から「空き家の冒険」発表の間(読者はホームズは死んだと思っていた期間)に発表された「バスカヴィル家の犬」事件は、「最後の事件」の前の事件として扱うことで、「空き家の冒険」以前にライヘンバッハから生還したということにしないで済んだと言うことになりました。

獅子雄と若宮の出会いから獅子雄の失踪までの間は2ヶ月程度とあまりにも短いこと、正典と違ってリアルな時間軸とリンクしているので、予告編が公開された今のタイミングが実際に再会する前の日付であること、などからなかなかヴィクトリア時代の読者と同じ体験にはならないのが残念ですが、シーズン2(があるとはまだ決まってないものの)の前に映画で獅子雄・若宮コンビに再会できるのはとっても幸せなことだと思っております。

 

ストーリー

 テレビシリーズでは、語られざる事件(原作に名前のみ登場するが詳細を描かれていない事件のこと)をモチーフに毎回のストーリーが展開していました。どの語られざる事件なのかを推理するのもシャーロッキアン界隈の楽しみになってました。

今回の映画については語られている事件(「バスカヴィル家の犬」)が元になっているであろうことがタイトルからうかがえます。なので、どの事件か推理する楽しみが奪われてしまっているのは残念。作中で語られざる事件が登場していることを期待します。

 

さて本作のストーリーは、公式サイトでは以下のように紹介されています。

瀬戸内海の離島。日本有数の資産家が、莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げる。資産家は死の直前、美しき娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。
真相を探るため、ある閉ざされた島に降り立つ獅子雄と若宮。二人を待ち受けていたのは、異様な佇まいの洋館と、犬の遠吠え。容疑者は、奇妙で華麗な一族の面々と、うそを重ねる怪しき関係者たち。やがて島に伝わる呪いが囁かれると、新たな事件が連鎖し、一人、また一人消えてゆく。底なし沼のような罠におちいる若宮。謎解きを後悔する獅子雄。
これは開けてはいけない“パンドラの箱”だったのか?その屋敷に、足を踏み入れてはいけない―― 。
終わらない謎へ、ようこそ。

謎の変死ですが、原作では心臓の弱い資産家が何かにおびえて走って逃げて心臓発作で亡くなったというもので、周囲に巨大な犬の足跡が残っていたことが現地の伝説とリンクして謎をよんでいました。

 

本作ではどのように亡くなったのかまだ分かりませんが、死んだ資産家は事前に誘拐事件について「若宮」に捜査を依頼していたようです。原作では、謎の死を遂げたチャールズ卿は生前にワトソン博士はおろか、ホームズに何らかの事件を依頼していたということはありませんでした。ただ、初期の調査のためにヘンリー卿に同行していたのはワトソン博士なので、「若宮」に依頼したと言うことにつながっているのかもしれません。

あるいは、獅子雄がいない間、白衣を着て頑張っていた若宮君にも依頼が来るようになっていたとすると、それなりに捜査の成果を上げ評判を上げていた可能性もあります。そして若宮に依頼したということは、獅子雄が復活してからまだ間もない頃だったから、ということも考えられます。

 

「閉ざされた島に降り立つ獅子雄と若宮」とありますが、原作の事件が発生したのはダートムアという荒涼とした場所で、ある意味閉ざされているという言い方もできるかと思いますが、最初に現場に行ったのはワトソン博士だけだったので、獅子雄と若宮が二人で島に降り立ったというのも原作とはやや異なるところ。(原作でも実はホームズも現地に行っていたので二人が現地にいたという点では間違いではないものの。)

*ダートムアを訪問した時の様子はこちらで紹介しています。

洋館というのはバスカヴィル館、犬の遠吠えも原作でもワトソン博士が聞いています。

島に伝わる呪いというのは、原作で言う魔犬伝説があてはまります。

一人、また一人と消えていくというのは原作ではなかった部分かと思います。連続した死ということでは、ヘンリー卿と脱獄囚セルデンとなりますが、一人一人というには二人だけなので当てはまらないような。

「底なし沼のような罠に」というのは、原作の底なし沼のグリンペンの沼の暗喩でしょう。

謎解きを後悔する獅子雄というのは原作では思い当たるエピソードはありません。「バスカヴィル家の犬」以外の事件でも、謎を解いて後悔したホームズというのは見られないように思います。

原作では、あわやヘンリー卿がなくなったのかも、と思わせる場面で後悔していた場面はありました。

ビジュアルでは、錠前と鍵、新聞を切り抜く、英語の文書なども予告編で出てましたが、新聞の切り抜きは「産廃誘致」の記事の見出しの「誘」の字を切り取っている様子で、おそらく誘拐事件の身代金要求の脅迫状に使われたと思われます。(公式でも脅迫状らしき画像が見えます。)

正典でも新聞を切り抜いた字を使ったヘンリー卿にあてられた手紙というのがありました。

 

登場人物考

ストーリーは公式サイトによれば以下の通り。

相関図

左側の獅子雄、若宮コンビ、そして江藤・グレのコンビはおなじみの面々。

右側に行くとまずは蓮壁家の人々ですが、はすかべ=バスカヴィルということかと思います。

千鶴男は語感から、そして変死をしたと言うことで原作のチャールズ卿にあたると思われます。チャールズ卿の妻は登場していませんので依羅というのは誰なのでしょう。

長女もバスカヴィル家にはいませんでした。千里というのが語感からしてもヘンリー卿に当たる人物かもしれません。紅が「ベに」と読むのであれば、ヘンリーと少し似てるかも。

誘拐というキーワードですが、バスカ原作では誘拐事件は発生しないのですが、最後の場面でステープルトンの妹と偽られていたベリルが柱に縛り付けられていた場面があります。紅も同じ「ベ」がつくのでベリルにあたるのでしょうか。

使用人の馬場杜夫というのは、原作でもいた使用人がバリモアなので名前的にもそうでしょう。最初見たときに使用人を代理人と見間違えて、ホームズに最初に事件を持ち込んだモーティマー博士がMが二回重なる感じが似てるのでそうかとおもったのですが、よく見たら使用人でした。

リフォーム業者というのが分からないのですが、馬場がモーティマーかと思ったので夫婦と言うだけで執事のバリモア夫妻なのかと思いましたが、名前を見ると冨楽雷太で、原作の登場人物で語感が近いのはフランクランド老人となります。ふらくらいたでフランクランドに通じているのですが、同氏が住んでいたラフター邸のラフターと雷太も似てるかも。訴訟好きの地主なのですが、「他人の屋敷の門扉をみずからとり壊しておき」なんていうエピソードもある人物なのでリフォームにも関連していなくはない?

フランクランドの妻は描かれていませんが、娘がいてローラ・ライオンズといいます。朗子とも「ろ」から始まる点では共通しているかも。

そして大学准教授の捨井遥人=すていはるとは、植物学者のステープルトンと合致しそうです。

その他の主要人物としては脱獄犯のセルデンというのがいるのですが、当てはまりそうな人はいないようです。あとモーティマー博士もですね。

あとこちらのツイートで教えてもらったのはバリモアの妻がイライザなので、依羅がそれにあたるのかもということ。

バリモア夫人の名前は即座には浮かびませんでした。

 

Tomo’s Comment 

ということで、少ない情報からあれこれ考えてみました。

まだ半年あるので、まだまだ事前に情報が小出しで出てくると思いますので、その都度改めて考えてみたいと思います。

そうこうしているうちに半年なんかあっという間に経ってしまうのでしょう。この待っている時間も楽しみで仕方がありません。

 

本作の試写会の応募もあったのですが、残念ながら当たりませんでしたが、他の人たちとああでもない、こうでもないって楽しむ時間がなくなってしまうので、当たらなかったのはそれはそれでよかったのかもしれません。

 

そして、上でも書きましたが、22年12月からのシーズン2の開始に映画がつながっていくといいなとも密かに期待しているところです。

 

追記(2022年1月10日)

ドラマの時にもいつも感想を楽しみに読ませていただいた黄緒さんから情報いただきました。

 

こちらのインタビューを読むといくつか内容に関わることが書かれていました。

事件の時期ですが、

劇中では、獅子雄と若宮が再会後、再びバディとして事件の依頼を受け始める。

とのことで、やはり再会後という設定のようです。

そうなると描き方にもよるけど、今年12月からリアルタイムでのシリーズが始まるという可能性は低そうです。(というかそもそもドラマなので始まるとしたら1月からか・・・。この事件が年末年始の話だとするとぎりぎり1月から始められるかな。)

 

それと、

若宮に絶体絶命の危機が迫る

とのこと。獅子雄が後悔するという情報もあるので、「悪魔の足」的な展開もあるのでしょうか。

 

西谷監督のこちらの言葉。

原作者アーサー・コナン・ドイルが“バスカヴィル家の犬”を書く動機となったエピソード、ブラックドッグの伝説に心惹かれた。

ドイリアンではないので、ダートムアを訪れたドイルが同地の魔犬伝説を聞いたことが執筆のきっかけということぐらいは知っていたのですが、その伝説の内容は覚えていませんでした。

ホームズ辞典類をパラパラとめくっていたところ、「シャーロック・ホームズ大事典」に以下の記載がありました。

民話収集を趣味にしていたフレッチャーは黒犬伝説をドイルに話して聞かせた。(中略)これは子牛ほどもある黒犬で、口から火を吹き、大きな鋭い目を輝かせて夕暮れに現れ、その姿を見た人は必ず夜明けまでに死ぬと言われていた。(P595)

お墓に埋められたという内容は書かれていませんが、語り方から類推するとブラックドック関連の話はイギリス全般の伝説のようです。

 

太田プロデューサーのコメントで気になったのは、

特に今回は、若宮の成長記録という側面もあり、手厳しいながらも愛が思わず溢れてしまう獅子雄の姿も必見です。

というところ。

正典はホームズとワトソンの友情の記録であるという見方もありますが(下でリンクしている本は二人の友情について読みたい人には必読)、本作も二人の関係が変化を遂げつつだんだん強くなっていく様子はドラマの時にもうかがえました。今回は若宮の成長記録ということで、獅子雄不在時に独り立ちしてやっていた若宮を手厳しく指導する様子なのども見られるのかもしれません。予告の「0点だ」の台詞当たりに片鱗を感じます。

 

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