ディーン・フジオカ (C) フジテレビ (画像クリックで公式へ)
ついにラスト2回となった月9「シャーロック」。
前回は登場しなかった守谷=モリアーティの影がラスト前にして再度ちらついてきました。
最後は意味深なシーンもあって来週には期待しかありません。
そんな第10話もホームズ原作ネタがふんだんにありましたので、まとめておきたいと思います。
今回のモチーフとなった「語られざる事件」
さて毎回の「語られざる事件」ですが、先週の予告から明らかだったとおり、「ある政治家、灯台および調教された鵜に関する件」で間違いなかったですね。
まず「政治家」というのは今回誘拐された涼介の父である鵜飼昇平が都知事ということで政治家です。そして「調教された鵜」については、都知事の名前が鵜飼ということで合致。ここまでは予告や公式から推測できました。
しかし、分からなかったのが「灯台」。
いつ登場するか待っていましたが、最初にでてきたのはこちらかな。
#シャーロック 🕵️♂️
Hidden message📝 “本倉燈大”とうだいもとくらし 灯台下暗し
とうだい もとくら 燈大本倉気づかないほど、敵は近くに潜んでるってメッセージだとしたら…..😱
守谷は?⁉️
#ディーンフジオカ #Shelly #SearchingfortheGhost 👻 #月9でシャーロック 📺 pic.twitter.com/B1f6BRMMtJ— F PenDEAN (@FIRSTPENGUIN6)
その後も「灯台もと暗し」というフレーズが獅子雄から語られたり、実際にその通りの場所に絡む謎解きがあったり。
この「語られざる事件」は、「覆面の下宿人」という話で語られています。
しかしながら私としては、最近これらの書類を入手して破棄しようとするたくらみがあったことには、強く反対するものである。この暴挙の張本人はわかっているから、もし重ねてこのような非行が起こるにおいては、私はホームズの名のもとに、ある政治家、灯台および調教された鵜に関する件を世に公表してやるつもりである。こういえばわかる人が少なくとも一人はあるはずである。(「覆面の下宿人」(新潮文庫)より)
ワトソンにしては珍しく憤慨している様子ですね。
プライオリ学校からもいろいろと
「語られざる事件」をモチーフとしつつも、下敷きとなる事件があるのはいつもどおり。
今回は同じ誘拐事件であったプライオリ学校」からたくさんのエピソードが取られていました。
まず、全体の図式として、誘拐された子供の親が政治家。鵜飼は都知事でしたが、プライオリ学校では前内閣閣僚のホールダーネス公爵、誘拐された子供の上に、世間には秘密になっている子供がいたこと、誘拐が発生したのが寄宿舎、等々、かなり事件全体をなぞっている印象です。
鵜飼都知事は、冒頭の記者会見でかつての不倫騒ぎについて記者に突っ込まれていました。ホルダーネス公爵も過去の女性問題、そしてその女性との秘密の子供を自分の秘書にしていました。
ホームズさん、私は若いとき、人の一生にただ一度というあの激しい恋愛をしました。むろん私はその婦人に結婚を申しこんだのですが、相手は身分ちがいの結婚は私の生涯を不幸にするからと、承知してくれませなんだ。この婦人が生きてさえいてくれたら、私は誰とも結婚なぞする気持はなかったのです。
彼女は死にました。彼女は子供を一人のこして死にました。私は彼女への思い出のため、この子を愛しみ育てました。はっきり親子を名乗ることは、世間体が許さなかったが、できるだけ立派に教育もするし、成年になってからは手許へひき取ることにしました。(「プライオリ学校」(新潮文庫)より)
鵜飼都知事も「二人は愛し合っていたが、家柄の違いから結婚に至らなかったそうだ。」と獅子雄が第一秘書から聞き取っていましたので、全く同じですね。
嫉妬から弟を拉致するというのも共通しています。一方の弟の方もそれぞれ「家庭におけるこの少年は必ずしも幸福ではなかったのです。」というところは一致してますね。
それから、プライオリ学校事件、ホームズにしては珍しく明確にお金をもらう意思を示して大金を得ていました。今回も、最初に獅子雄が事件を引き受けた理由がお金、というところが共通しています。
獅子雄が「報酬を取るぞ」、「誘拐事件に決まってるだろ。一番金になる。」と冒頭で語っていました。(実はその事件を選んだのには別の理由があったのですが。)
プライオリ学校でもホームズはお金のことを公爵に確認しています。
「閣下、実を申しますと私ども——ここにおりますワトスン博士と私は、この事件には懸賞金がついているように、ハクステーブル博士の保証を得ておりますが、そのことを閣下のお口から直接に確かめておきたいと存じます」
「確かにその通りです」
「令息の所在をお知らせ致した者には五千ポンドくださるとうかがっておりますが?」
「その通りです」
「令息を誘拐監禁した者の名をお知らせ致せば千ポンド追加せられるともうかがっております」
「それも間違いありません」
「後者の場合は、むろん、令息を誘拐した者ばかりでなく、現に監禁している共謀者をも含むと解してよろしゅうございますね?」(「プライオリ学校」(新潮文庫)より)
登場人物名でも、プライオリ学校の教師で誘拐に関係したと考えられていたがドイツ人教師のハイデッガーという人物。涼介の通っていた学校のバスケ部のコーチが灰田ということで、ハイデッガー=ハイデ=灰田と一致します。結局、犯人ではなかったところも共通でしょうか。
プライオリ学校で誘拐されたサルタイヤ卿も寮生活をしており、ルームメイトがいました。ルームメイトの証言は今回の事件のルームメイト竹内君の証言とも共通していました。
失踪を発見したのは翌火曜日の朝七時で、寝台はいったん寝た形跡がありました。出かけるまえに学校の制服になっている短いイートン・ジャケツにこいねずみいろのズボンをはいて、きちんと自分で身なりを整えています。部屋のなかへは誰もはいった様子はないし、そのことは、奥の部屋に寝ている少年のうち年上のほうのカウンターというのが、ごく目ざとい少年なのですがさけび声とか格闘の物音とかは聞かないと言っていますから、確実だといえます。(「プライオリ学校」(新潮文庫)より)
そして「プライオリ学校」で、トリックとして使われたのが蹄鉄でした。
「私どものこんどの北部地方への小旅行が、いろいろと幸福をもたらし得たことを、まことに喜ばしく存じます。このうえはただ一つだけ、ごく小さな事がらながら、私としてはっきりさせておきたいことがございます。へイズという男は、自分の馬に牛の足跡のつく蹄鉄を打ちましたが、この驚くべき巧妙な工夫は、ワイルダー君から教えられたのでございますか?」
公爵はひどく驚いた顔で、立ったまましばらく考えていたが、ドアを開けて私たちを次の間へ案内した。そこは収集品陳列室であった。公爵は片隅のガラス箱のところへと私たちを導き、それに出ている次のような説明文を黙って指さした。
「この蹄鉄は当屋敷の外壕中より発掘されたるものにして、馬に用いられたるものなれども、裏面は分趾蹄の形をなし、追跡者をくらます。中世時代略奪を事とせるホールダーネスの豪士の使用したるものと推定せられる」(「プライオリ学校」(新潮文庫)より)
獅子雄が涼介に気づいたシーンというのが野球部なのにバッシュを履いていたというポイント。私も気がつかなかったのですが、こちらのツイートでなるほどと。
靴は違うけど野球部の群に紛れるのは、蹄鉄だけ変えて牛の群れに紛れるのとちょうど逆ですね#月9でシャーロック
— すみれ狩り (@sumiregari)
そして、こちらも細かいのですが、大根で殴られた事件について江藤警部が獅子雄に言っていたのですが、ハイデッガーが撲殺されたことと絡めているのかもしれません。
その他の事件からも
プライオリ学校以外にもいろいろと仕込まれておりました。
最後に涼介の居場所をつかんだ獅子雄が消防士の格好をして発煙筒を焚いていぶり出した手法は「ノーウッドの建築士」と同様。ちょっと長いですが引用します。
ワトスン君、すまないが窓をあけて、麦わらの端にマッチで火をつけてくれないか」
私はいわれた通りにした。すると風に煽られて、灰色の煙がもくもくと渦まいて廊下を這い、麦わらはパチパチ音をたてて燃えあがった。
「さ、レストレード君、それではこの証人がうまく出てくるかどうかやってみましょう。みんな声をそろえて、火事だッとどなってください。いいですか、一、二、三——」
「火事だアッ!」一同声をそろえて叫んだ。
「ありがとう。もう一度」
「火事だアッ!」
「その調子でもう一度頼みます」
「火事だアッ!」この叫び声はノーウッド中に響きわたったに違いない。
と、この三度めの声のまだ消えるか消えぬうちに、驚くべき事が起った。廊下のつきあたりの、それまではただの堅い壁だとばかり思っていた場所が、パクリと口をあいて、まるで穴からとびだす兎のように、小柄でしなびた男がころがり出てきたのである。
「ようし」ホームズは平静である。「ワトスン君、バケツの水を一杯、麦わらにかけてくれたまえ。それで結構だ。レストレード君、行方不明の重要証人ジョナス・オールデカー氏を紹介します」(「ノーウッドの建築士」(新潮文庫)より)
本人の自作自演だったというところも共通しています。
冒頭、獅子雄に誘拐事件を選ばせようと、江藤が他にあげたつまらなそうな事件の一つが上の大根撲殺事件なのですが、もう一つが二宮金次郎の像ばかり壊すという器物損壊事件。これは、ナポレオン像ばかり選んで壊していた「六つのナポレオン像」のオマージュかと思います。
涼介達の寮の名前がライヘンバッハ学生寮。いわずもがな、ホームズがモリアーティ教授と一騎打ちをしたのがライヘンバッハの滝でした。最終回前に不穏な名前が出てきましたが、今回は特に獅子雄と守谷の対決には関係していませんでした。次週何かあるのかな。
ライヘンバッハの滝には昔行ったことがあります。モリアーティ教授を葬るのにふさわしい荘厳な滝でした。
涼介達の通っていた学校の名前が聖ルーク学園。「三人の学生」の事件の舞台になったのが、セント・リュークというカレッジでした。どちらも英語だとSt. Lukeとなります。
当時私たちは、初期イギリスの勅許状に関する骨の折れる研究のため——その研究の成果がいかに驚嘆すべき業績となって現われたか、いつか一度は話すこともあろうと思うが——ホームズがかよっていた図書館にちかく、家具つきの部屋を借りて住んでいた。この部屋である晩私たちは、ヒルトン・ソームズ君といって、セント・リュークのカレッジで講師兼指導教師をつとめていた一面識のある人の訪問をうけたのである。(「三人の学生」(新潮文庫)より)
ライヘンバッハ同様、本筋には絡んできませんでしたので、名前だけですね。
今回、都知事が身代金を持って走り回るシーンから、事件の全容を見破った獅子雄ですが、それは鏡に映った津崎の姿から。
磨いたコーヒーポットに映ってばれたのはワトソンでしたが今回は秘書さん#月9でシャーロック
— すみれ狩り (@sumiregari)
「バスカヴィル家の犬」でこんなシーンがありました。
「どうだね、ワトスン君、それをどう思う?」ホームズは私へ背をむけて食卓についていて、私からは何もいいはしないのにこれである。
「僕のしていることがどうしてわかるんだい? まるで背中に眼がついてるみたいだね」
「僕の前に磨きのかかった銀のコーヒーポットがあるんだぜ。9「バスカヴィル家の犬」(新潮文庫)より)
次週への期待
いよいよ最終回!
第10話の最後のシーンで、第3話に登場した市川が脱走したとのニュースが流れました。
男女4人が脱走ということで、4という数字からは「四つの署名」などが思い浮かびます。ただ、脱獄できたのはジョナサン・スモールだけということで4人での脱走とはあいません。
脱獄だけだとバスカヴィル家の犬のセルデンもいますがこちらも単独。
脱走ではないのですが、その他に4人で思い出すのは「男を相手に3回、女を相手に1回失敗した」(「オレンジの種五つ」)というホームズの言葉。女を相手にというのはアイリーン・アドラーのことを指しているものと思われるので、市川を指している訳ではないのですが、男女というところと合計4人というのは少し関係しているかもしれません。
江藤警部が次回はなにやらミッションを与えられるようですが、組織に潜入して秘密のミッションを遂行するというのは「恐怖の谷」。こちらにはモリアーティ教授も登場しており、親和性は高そうです。ストーリー的には潜入していたエドワーズはモリアーティ一味に殺されてしまうのですが、江藤警部にはそうなってもらいたくありません。そういえばエドと江藤、ちょっと似てるかも。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
あー、あと一回しかないという事実が受け入れられないです。
何度もつぶやいていますが、シリーズ化、映画化など、どんな形でもいいので続けてほしいと願っています。
そして、悲しいことに最終回放映日にまたしても日本におりません。
リアタイは難しいかもしれませんが、録画機の屋外視聴でなるべく早く視聴したいともいます。
今回もツイートを引用させていただいた皆様ありがとうございます。漏れなどありましたら、#月9でシャーロック のタグでつぶやいていただければ極力拾っていきたいと思います。
前回までのまとめはこちら
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アイリーン登場?新月9ドラマ「シャーロック」第二話もシャーロッキアン的に見てみる
早くも黒幕の影が!新月9ドラマ「シャーロック」第三話もシャーロッキアン的に見てみる
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