なんとなくこのQEDシリーズのことは知っていたのですが、題材がホームズと言うことで、手に取ってみました。
シャーロッキアン達が登場
本書を手に取った動機としてホームズが取り上げられていると言うことがあったのですが、実はホームズそのものよりも、登場人物達によるシャーロッキアン的な会話や議論が魅力的。
本書に登場するシャーロッキアン達のように、すらすらと正典の文章が出てきたり、研究成果に言及することはできませんが、 何かにつけてホームズ作品からの引用ができるほど読み込むことが重要だと思ってしまったり。
でも、シャーロッキアンではない人にとっては、こうした人種は奇妙に映るんだろうなと思います。主人公の奈々や登場している警部補のようなシャーロッキアンではない人の冷めた目線というものも本書では書かれているのでマニアックになりすぎずバランスがいいですね。
実際シャーロッキアンの方々と会う機会も多いのですが、みなさんマニアな話題はもうし尽くされているのか、シャーロッキアンの関心も多様化しているからか、この本のような会話をすることはあまりないような気もしています。
章立てにも工夫が
まず目次を見て注目したのが本書の章立て。目次を見ると、各章が冒険、回想、生還、挨拶、事件簿、功績というタイトルになっています。
これらは、シャーロッキアンには言うまでもないことですが、ホームズの短編集のタイトルが発表の順番に用いられています。
ただ最後の「功績」というのはドイルの息子のエイドリアンとディクスン・カーが書いたパスティシュ集のタイトルということでやや異色。
この章のタイトルにも何か隠れた意味があったりするのかと楽しみに読み進めました。
冒険、回想あたりは、内容とマッチしていましたが、その後はちょっと関連が薄かったかもしれません。もう少し細部まで読み込むと内容と章のタイトル関連性がはっきりするのかもしれません。
最終章の「功績」も何か二次創作的な要素とか、親子関係とかの要素があるのかと思いましたが、見いだすことはできませんでした。各章の最初にホームズ作品からの引用があるのですが、「功績」の章は「空き家の冒険」からで、モラン大佐の脅威がなくなって、という事件最後の部分ですが、ここにも意味があるのかもしれないとかいろいろと考えてしまいます。
推理小説として読んでみると
内容ですが、ホームズ作品の謎と、実際の殺人事件の構図がリンクした形になっています。
シャーロッキアンとしてとても楽しめたのですが、最後の謎解きは意外とあっさりしていたような印象です。QEDというシリーズ名から、もう少し複雑な伏線やヒントが張り巡らせてあるタイプの作品だと思っていたのですが、与えられた材料だけで犯人を推理するのは難しかったようにも思います。
読者に探偵と同じ推理するための情報を与えるタイプのミステリーを読む際には、最後に探偵が事件を解決するシーンの直前で本を閉じて犯人・犯行方法などを自分なりに考える時間を取ってから、探偵の種明かしを読むようにしています。親切に、ここで考えてみましょう、みたいなメッセージがはいいている小説もあったりしますね。
最終章を読んで、作者がフェアに手がかりを読者に提示していつつ、自分の推理を超えた真相を与えられたときにいいミステリーを読んだなあという気分になります。
本書はその点では、自分の推理は外れていたのですが、与えられた手がかりからはちょっと推理が難しい結論だったようにも思うのは、推理力が足りないのか、見ているだけで観察していなかったのか。
Tomo’s Comment Follow @tommasteroflife
私にとってはシャーロッキアン的なネタにクスリとさせられる部分が魅力的だった本書。
シャーロッキアン達のこれまでのいろいろな研究に言及されたシーンはよくリサーチされていますし、主人公の崇もシャーロッキアンとして「ホームズの最大の謎」と彼が言う難問に答えを出しており興味深いところ。
ちなみに、その謎というのはライヘンバッハでの決闘前後で、ホームズの性格や趣味などが変わっているのをどう説明できるのかというもの。個人的にはもう少し違う解釈ができるように思いますし、崇の理論にも若干のほころびがあるように思えましたので、自分なりの解決を考えてみたいと思います。
シリーズ物なので、この前の作品で語られているであろう登場人物達の個性や関係性など、ちゃんと読んで踏まえていた方が楽しめるかもしれませんが、本書だけ読んでも十分楽しめますし、シャーロッキアンであればさらに楽しめることは間違いありません。
シャーロッキアンについてはこちらの記事でも
【ホームズ】シャーロック・ホームズではなくその研究者=シャーロッキアンが主人公という珍しい設定の漫画。「シャーロッキアン!」
シャーロッキアンではありませんが、ホームズが大好きです☆
ホームズが好きなら「自称:シャーロッキアン」でもOKなのかしら。。。
和書でシリーズ物のパスティシュは珍しいですね。知りませんでした。
推理を楽しむのよりは、ホームズネタで楽しむミステリでしょうか
作品の世界観を楽しむのが好きなので私にピッタリかもです。
このシリーズチェックします♪
私もこの本の感想をブログに書きましたが…Tomoさんのように優しくて論理的な感想じゃなくってよ(笑)。若い男女の探偵×助手より、中年男二人の方がよっぽど恋愛未満の緊迫感あるぞ、とかね。
それにしても、そんなにホームズってライヘンバッハ以後に変わったかなー?なんて思ってる私はまだまだ読みが足りないのでしょうか…。あの解釈はちょっと受け入れがたいものがあります。ほころびを指摘できるほどではないのですが。
>Bettyさん、こんばんは。
和書のホームズものって結構あるみたいですね。漱石とからめたものもあるようなので、今度読んでみようと思っています。
推理ものとしては、私としては証拠と真相のつながりがいまいちに感じました。でも、ホームズ蘊蓄が楽しめたのでオッケーです。
ホームズものはこれだけで、他は古典の謎などにまつわるミステリーのようですね。
>ぐうたらぅさん、こんばんは。
確かにタタルと奈々さんの間の緊迫感はいまいちですね。もう少しなにかあると違った楽しみがあるんでしょうね。
私も実はライヘンバッハの前と後の違いというのは、それほど気になっていませんでした。コカインをやめたのもワトソンの努力だろうなくらいに思ってました。(グラナダではもう少し明白にしてましたね。)でも、モリアーティだけが逃げたと行っていたのにモラン大佐がいたり、モラン大佐に生存を知られているのに死んだふりを続けることなんかはちょっと矛盾を感じています。
タタルの解釈は私にはちょっと矛盾が多いように思っています。うーん、ちょっとまじめに検証してみようかな。
p40に載っている「ジンとスコッチとドランブイ」を
「4対3対1」で作るシャーロック・ホームズカクテル
がとても美味しそうに感じました。
それでこの割合をバーテンさんに教え、そして
「シャーロック・ホームズ」のイメージを+αして
カクテルを作ってもらったことがあります。
パソコンを検索してみるとひとつだけレシピが残っていました。
帝国ホテルのラウンジバーで作ってもらったものですが
Beefeater Dry Gin
Johnnie Walker Black
Drawbuie
Cointreau
Lemon Juice
イメージは
「霧の中に隠れている犯人を捜す探偵」
グラスの中が霧のようにモアモアとしていて甘くない
美味しいカクテルでした。
とても楽しい遊びでしたよ〜〜♪
>みっちょんさま、こんばんは。
ホームズ・カクテルは私もちょっと飲みたいなと思っていました。ジンやスコッチはイギリスのイメージなのだと思いますが、あまりウイスキーを入れたカクテルって飲んだことがないので、どんな味になるのか興味深いです。ラスティネイルにジンが加わるのでちょっと強めの印象かな?みっちょんさんのレシピはさらに深い味になりそうですね。
Tomoさん
私はカクテル一杯で打ち止め、と言うくらいアルコールに
弱いので飲み比べをしてお気に入りカクテルを決めれません。
ぜひTomoさんが試作と試飲をなさってTomoバージョンの
カクテルをお願いします。
出来れば私の好みは甘くないカクテルが好きです・・・・・
>みっちょんさま、
昔、学生時代にバーテンのバイトをしていたときに、店長から味が分からないものはお客さんに出せないから、味見して良いといわれ、いろいろとやってみたことがありました。私の好みはすっきりと酸味がきいた物が好みでしたが、味だけではなくそのカクテルに対する思い入れなどもあると思います。マーロウを読んだ後はギムレットなど美味しく感じました。ホームズの名前を冠しているだけで、美味しく感じてしまうかもしれませんね。
甘い物でも美味しい物はあるのですが、私にとってはお酒というよりはソフトドリンクに近い位置づけでしょうか。
カクテルを作るのは好きなのですが、材料が多い割に少ししか使わないので、材料となるお酒やリキュールを揃えるところがネックですね。まずホームズカクテルの材料をとりあえず揃えてみて研究してみます。
楽しみです!
「長いお別れ」を読んだ時はギムレットを試して
みた事がありますがかなりきついカクテルですね。
美味しかったですがこれも一杯でダウンでした。
先日久しぶりにソルティドッグを飲みましたが
これまた一杯でおしまい。
もう少し強くなりたいものです。
>みっちょんさま
ソルティドッグは意外と強いので注意ですね。カクテルでの酔いは結構次の日くるのであまりいろいろと飲まない方がよいようです。