【ホームズ】シャーロッキアンへの入り口になった思い出の本。「シャーロック・ホームズ17の愉しみ」

シャーロック・ホームズ17の愉しみ

こちらは1967年までに発表された、著名シャーロッキアン達のアンソロジー。ホームズに関するパロディ、研究、エッセイなど短編を17編収録したシャーロッキアン必読の一冊です。

 

本格的ホームズ研究との出会い

この本は、十数年前の最初にホームズ研究の世界に出会った頃に購入した物です。

同じ頃に出会った「名探偵読本 シャーロック・ホームズ」を紹介した時にも書いたのですが、ベーカー街221Bがどこにあったのか、当時の地図を駆使して迫った論文を読んで、ホームズを研究する世界があるということを知るきっかけになりました。

その論文が「名探偵読本」に入っている物だとばかり思っていたのですが、実際はそうではなくて、こちらに入っているというご指摘をいただき、本棚を捜してみたらちゃんと本書がありました。

 

バーナード・デイヴィス著「ベーカー街の裏庭」

お目当ての論文は、「ベーカー街の裏庭」というタイトルで著者はバーナード・デイヴィース氏です。

ベーカー街と言えば、本Blogでもさんざん取り上げて写真をアップしていますが、実はホームズが生きていた時代には221という番地は存在していませんでした。(ホームズ作品では存在しない番地がしばしば使われますが、これはワトソン博士が何かに配慮して架空の住所を使っていると、私は勝手に解釈しています。)

現在はベーカー街が延長されて221という番地も実存しています。ちなみに、ホームズ博物館のところに221のプラークが掲げられていますが、実際はもう少し南のAbbey National Building(今はマンションになっています)がそれにあたります。

ベーカー街に221番地がなかった時代、ホームズは実際にどこに住んでいたのか。

数多くの研究者がその場所を研究してきましたが、この論文ではそれらに対する反証を行うとともに、「空き家の冒険」を検証して場所を特定しています。

「空き家の冒険」は、ライヘンバッハで宿敵モリアーティ教授とともに滝壺に消えてしまったと思われたシャーロック・ホームズが、実は死んではおらず、4年間の空白の後に再びワトソン博士の前に姿を現すという作品。

この作品の中で、ホームズを狙うモリアーティ教授の配下、モラン大佐を捕らえるため、ベーカー街のホームズの部屋に蝋人形のおとりを置き、ホームズ達は通りの反対側の空き家に張り込みます。

この空き家=カムデン・ハウスにホームズがワトソンを連れて向かう際、モラン大佐に見つからないよう慎重を期して、かなり遠くで馬車を降りて、裏道を通って空き家の裏庭から侵入しているのですが、デイヴィース氏が検証したのは、この道順と空き家の裏庭の様子です。

道順はかなり詳細に書かれているため、まずは空き家の裏庭に面する通りを特定し、次に当時の地図を調べて該当する地域にある家で裏庭がある家を探しました。

その結果導き出されたのが、空き家=カムデンハウス=ベーカー街34番地でした。

 

この空き家の向かい側にホームズの部屋があったということで、今度はベーカー街をはさんだ反対の地域で、ホームズの部屋の特徴(すずかけの木が生えるのに十分な広さを持った裏庭を持つ家「ソア橋」)を踏まえて検証した結果、ベーカー街31番地がホームズの住んでいた部屋という結論となっています。

 

 ということで、ホームズファンからホームズを研究する人=ホーメジアン(orシャーロッキアン)になろうというきっかけを与えてくれた懐かしい論文を発見してとても嬉しかったのですが、この論文の著者、デイヴィースさんといえば、ロンドンに留学していたとき、ロンドン・シャーロック・ホームズ・ソサエティ主催の南ロンドンツアーでガイドをしてくださった方でした。

 

ホームジアンとなるきっかけを与えてくれた人とロンドンで出会えるなんて不思議な縁でした。(でも、実はガイドしてくださったときにはそんなことも知らず、そのお話もできなくて残念でした。)そして、ツアー開催時にも言われていたのですが、これがデイヴィースさんの最後のガイドとなってしまい、2010年9月21日にお亡くなりになられました。

 

 

デイヴィースさんはホームズ作品に登場する場所に関する研究で有名な方ということで、「ゆかりの地」巡りをしていた私にとっては尊敬する先輩ということになります。

ロンドンのSHソサエティの会報であるシャーロック・ホームズ・ジャーナルに、彼の研究の成果が数多く発表されています。

デイヴィースさんが亡くる直前に、研究結果をまとめてロンドン協会が出版したものが「Holmes and Watson Country」で、ホームズ地理学の聖典と言えるでしょう。

 

私も25冊限定の、サイン入りの一冊を入手でき一生の宝物です。

 

その他の作品

私の記憶に強く残っているのは上記のデイヴィースさんの論文なのですが、他の16編も厳選された内容。

  1. パスティシュ テトフォドの恐怖(エイドリアン・コナン・ドイル)
  2. パロディー ホームズの日記より(モーリス・ベアリング)
  3. パロディー ワトスン先生大いに語る(A・A・ミルン)
  4. 研究 「ホームズ物語」についての文学的研究(ロナルド・A・ノックス)
  5. 批評 事件発生年代に関する問題(S・C・ロバーツ)
  6. 伝記 ワトスン医師(デズモンド・マッカーシー)
  7. 研究 「赤髪組合」に書かれている日付について(ドロシー・セイヤーズ)
  8. ワトスン伝 「深靴をもってこさせてくれ」(アーサー・マーシャル)
  9. 告白 ホームズ研究書について―正典派の信仰(バーナード・ダーウィン)
  10. 追悼記 シャーロック・ホームズ逝く(E・V・ノックス)
  11. パスティシュ 才能ある素人探偵の事件(J・C・マスターマン)
  12. 研究 青いガーネットのたどった道筋(ギャヴィン・ブレンド)
  13. エッセイ 「もう一杯貰おうか、ワトスン!」(ジョン・ディクスン・カー)
  14. さし絵評論 「依頼人が階段を登ってきたよ」(ジェイムズ・エドワード・ホルロイド)
  15. パスティシュ 甥が語るモリアーティ死亡の秘話(W・S・ブリストウ)
  16. 研究 1891年4月から1894年4月まで(ロード・ドネガル)
  17. 研究 ベイカー街の裏庭(バーナード・デイヴィース)

パロディ・パスティーシュあり、年代学の研究あり、伝記ありと内容もバラエティに富んでいます。

地理学についても、デイヴィースさんのものに加えて「青いガーネットのたどった道筋」もあります。

これだけいろいろあれば、きっと関心が持てるものもに出会えると思いますので、シャーロッキアンの世界に飛び込むきっかけになると思います。

 

Tomo’s Comment 

17の愉しみと言うことで、なんで17なんだろうというのは読んでいるが考察が足りないと言われてしまいそうですが、英語の原題(「Seventeen Steps to 221B」)を見れば一目瞭然。

「君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大ちがいなんだぜ。たとえば君は、玄関からこの部屋まであがってくる途中の階段は、ずいぶん見ているだろう?」

「ずいぶん見ている」

「どのくらい?」

「何百回となくさ」

「じゃきくが、段は何段あるね?」

「何段? 知らないねえ」

「そうだろうさ。心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。僕は十七段あると、ちゃんと知っている。それは僕がこの眼で見て、そして心で見ているからだ。(「ボヘミアの醜聞」)

 

ということで、ホームズの部屋に上がる階段の段数と揃えたと言うことですね。

 

ところで、事件発生年月日を探る論文で当時の気象記録にあたって検証するという別の論文も同じ頃に読んだ記憶があり、こちらに入ってるとばかり思っていましたが勘違いだったようです。改めて捜してみようと思っています。

 

ホームズ研究書はこちらにも

【ホームズ】ベアリング・グールドによる詳しい解説が施された注釈付きホームズ全集の元祖「The Annotated Sherlock Holmes」

【ホームズ】レスリー・クリンガーさんによるさらに詳しい註がついた「The Sherlock Holmes Reference Library」はホームズ研究に不可欠と言えるレベル

【ホームズ】シャーロック・ホームズではなくその研究者=シャーロッキアンが主人公という珍しい設定の漫画。「シャーロッキアン!」

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