去年フランスのリールで食べた料理。(本とは関係ありません。)
フランス料理というとグランメゾンのすごくあらたまったイメージの印象が強かったり、ソースを多用してごてごてした印象が強かったりと昔はあまり興味がありませんでした。
でももちろんフレンチにも庶民的な料理も家庭料理もあるわけで、こうしたことが分かってくると少しずつ食べる機会も増えてきました。
そしてこんな本を読むとますます気取らないフレンチを食べてみたくなってしまいます。
どんな話?
舞台は小さなフレンチ・ビストロ。名前はマパルといって、「悪くない」といった意味なのだそうです。
人を食った名前ですがシェフの個性が表れていて、この三船シェフ、フランス修業時代は三船という名前のおかげで侍の子孫と思われてしまい、格好もそれに併せて長髪に髭にしていじめなどのトラブルを回避していたそうです。寡黙でおしゃべりはあまりしません。
三船シェフと一緒に料理をするのが志村スーシェフ。大手ホテルで仕事をしていたにもかかわらず三船シェフとこの小さなレストランで働くことにしたという人物。シェフと違って愛想がいいのでお客さんと会話するのはもっぱら志村スーシェフの役割。
そしてソムリエは紅一点の金子ゆきさん。若いのに俳句が好きという方で、商店会の俳句会にも入っているおかげで、商店会の中でもやっていけているとか。
そして若いギャルソンの高築智行がこの物語の語り手となっています。
この4人でまわしているだけあって、席数はカウンター7席、テーブルが5つとこじんまりした店で、メニューもその日の仕入れに併せて黒板に書かれたものだけ。
このお店を舞台に、お客さん達の不思議な体験が語られ、その数少ないヒントから三船シェフが謎を解いていくという展開の短編が収められています。
例えば、舞台女優と結婚したばかりの旦那さんが急にお腹を壊したという話し、偏食のお客さんの秘密、志村スーシェフと奥さんが昔体験したガレット・デ・ロワから消えたフェーブの謎、別れの原因となった恋人の作った美味しくないカスレのこと、等々。
いずれも大事件ではなく、起こったのも昔のことだったりするのですが、話を聞いた三船シェフは謎を解き、時には料理で解決を示したり。
魅力
事件はいずれもちょっとしたものばかりなのですが、料理に絡んでいるものばかり。
前述したように、フレンチは食べ慣れていないのですが、登場する料理の描写を読んでいると、どんな味がするのか食べてみたい気持になります。
そして気取らないマパルのようなレストランがあったら是非常連になりたくなってしまいます。読んでいるだけで、とても居心地がよさそうな雰囲気が伝わってきました。
Tomo’s Comment
登場人物はみんな個性的ですし、お話しも少し悲しいものもありますが心温まる解決が用意されていたり、そしてなによりビストロと登場する料理が魅力的。
フレンチももう少し食べる頻度を高くしたいと思いました。そしてこんなビストロをみつけて常連になりたい。
続編も刊行されているようですが、まだ電子書籍にはなっていない様子。本書でも要所で登場するヴァンショー(ホットワイン)のことが書かれているようです。
続編を読むまでにまだ時間がかかりそうですが、楽しみに待ちたいと思います。
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